老後資金どころじゃない!…住宅ローンと教育費に追われる年収700万円・50代夫婦、〈退職金1,200万円〉と〈再雇用〉で備えても、待ち受ける「貯蓄ゼロ」の絶望【FPが起死回生策を助言】
人生における出費の中でもかなり大きなウェイトを占める「住宅購入費」と「子どもの教育費」。「人生100年時代で老後が長くなった分、人生におけるイベントも後ろ倒しになる傾向があり、50代の段階で十分な老後資金が準備できていないケースも少なくない」と、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏は言います。長尾氏の著書『運用はいっさい無し! 60歳貯蓄ゼロでも間に合う 老後資金のつくり方』(徳間書店)より、どうすれば、60歳から老後資金を作ることができるのか、詳しく見ていきましょう。 【早見表】国民年金・厚生年金「年金受取額」分布…2022年3年度末現在 2023.01.10
老後資金、無限のマイナスからの脱出
〈山川(仮名)さんの家計データ〉 夫:50歳、年収600万円 妻:50歳(パート)、年収100万円 子ども2人(高校1年生、中学2年生) ・支出:住宅ローン返済額月額16万円(65歳で完済予定) 生活費は、月額34万円 ・貯蓄額:400万円 ・65歳時点での予定年金受給額 夫:180万円/妻:70万円 老舗企業の広告部に勤務している山川(仮名)さんは、現在50歳。「住宅購入費」「教育費」「老後資金」という三重苦のまっただ中にいます。妻の晴代さんもパートで働いているものの、これから子ども2人の大学進学が控えています。 2歳違いですから、大学の学費がダブルでのしかかってくる時期があります。おまけに、住宅ローンもあと15年残っています。子どもが手を離れたとしても、自分たちだって生活費がかかります。 「一応、貯蓄は400万円あるし、退職金も出る予定だし、10年間は企業年金ももらえるけれど、老後はなんとなくイヤな予感が……」 不安を拭えない山川さんです。
65歳まで働いても、家計は赤字
教育費がもっともかかるのが、大学入学時と大学時代です。受験から入学までの費用は、だいたい100万円、2人で200万円です。貯蓄400万円のおよそ半分は、これで消えてしまいます。2人分の教育費として1,000万円は用意しておきたいものです。 この通算6年は、かなりキツイ状態になるでしょう。私のシミュレーションによれば、58歳の時点で貯蓄がゼロになっています。まさに「老後資金がない!」と悲鳴をあげてしまう状況です。 退職金は1,200万円出る予定です。退職金だけでは長く暮らせませんから、再雇用で働くつもりでいます。といっても、年収は360万円に下がります。 イヤな予感、的中です。残念ながら、これでは足りません。65歳の時点で、すでにマイナスになっています。あとは、ひたすらマイナス、マイナス、マイナス……。無限のマイナスを前に、なんとかしなければと山川さんは顔面蒼白です。 そうですね、ひとまず老後資金はあきらめましょう。 「真面目に生きてきて、最後は路頭に迷えだなんて……。あんまりだ!」 山川さんのみならず、50代の方々から批判が殺到しそうですが、落ち着いてください。これは先のばしの提案です。山川さんの家計状況からすると、老後資金まで貯めるのは至難の技だと思います。50代ですべてを用意しようと思ったら、生活をかなり切り詰めなければなりません。いくら老後のためとはいえ、いまの暮らしを犠牲にするのはいかがなものでしょう。それに、ムリにムリを重ねる計画は途中で挫折しがちです。 人生100年時代。老後が長くなったぶん、人生におけるイベントは後ろにズレている感じがします。定年後も再雇用や再就職で働くスタイルは、もはや当たり前になりつつあります。定年延長も導入されつつあります。 だったら、60歳から老後資金の準備を始めればいいのです。
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