窪塚愛流が語る「夢をくれた人は…」 人生初の舞台で迎える、“俳優として”のターニングポイント
生きるか、死ぬかという状況におかれたら
――『ボクの穴、彼の穴。W』への出演が窪塚さんにとって初舞台となりますが、オファーがきたときはどんな気持ちでしたか? 初めて聞いたときは“ちょっとごめんなさい、できないです”って思いました(笑)。初舞台でふたり芝居…自分には担えないんじゃないか、などネガティブな考えばかりになってしまいました。 最後に演出のノゾエ(征爾)さんと喫茶店でお話をさせていただきました。舞台の稽古についてや自分の心情まで、僕と同じ目線で寄り添って一緒に考えてくださって…それで決意しました。 ――何が出演の決め手となったのでしょうか? 脚本はもちろんですが、舞台に立つ自分を想像した感覚として、きっと面白くなるだろうと思ったからです。さらにノゾエさんの演出は僕の中では特別感があって好きだったので、その演出の中に自分がいるのを想像するだけで興奮しました。 ――脚本を読んだ印象は? 台詞に現代的な要素もあったので、僕たちの世代にも想像しやすい世界が描かれていました。この作品は2つの穴にそれぞれが入っているボクと彼の物語。観客の皆さんからは舞台にいる2人が見えますが、ボクたちには相手が見えません。生きるか、死ぬかという状況におかれたら、それぞれが自分自身と対話をするのだろうと思いました。 それまでの自分になかった視点をこの作品を通して知り、戦争に対する見方や捉え方も変わり、演じることで俳優としてもさらに大きな知恵を得られるのではないかと思っています。
見えない相手を「恐怖」として受け止める
――どのようなことを感じましたか。脚本を読んで共感したことなどがあれば教えてください。 モンスターという、見えない相手を「恐怖」として受け止めるところ、それは自分にも通じるところがあると思いました。自分も“舞台”という未知の世界を、ある種モンスターのように捉えていたのかもしれません。 自分が舞台に立つということは例えるなら、お化け屋敷に行くよりも怖かった。(笑)舞台で何が起こるかわからないという恐怖がありました。 ――「穴」という言葉にはどんなことをイメージしていますか? この答えが合っているかどうかはわかりませんが、“考え方”だと思います。 最近あることで喧嘩をしたことがあって、自分は後先考えていなくて、なるようになる、と思っていたのですが、なるようになってしまったことが、相手にとってはすごくよくないことだったんです。 この喧嘩で、僕の短絡的な考えが人のことを傷つけてしまったと知って、この考え方から抜け出したいと思いましたし、自分の頭の中にある考え方や概念から抜け出したいという意味で、考え方というものが“穴”に通じるものがあると思いました。 ――ひとり暮らしを始められたそうですが、こういう暮らしがしてみたいという理想は実現できましたか? 理想は実現しました! 壁は打ちっ放しのコンクリートで、家具は青色をメインにしています。机も絨毯も青色っぽいので、すごく落ち着くんです。 青と黄色と白を使った、お花畑っぽい絨毯が特にお気に入りで、そこに青色のヨギボーを置いています。そのうえで過ごすのがすごく好きです。基本的にはずっと家にいて、夜ごはんを食べに出かけたりします。 ――自分がラッキーだと思えるのは、どんなときのどんなことでしょうか? 出会う人に恵まれていると思っています。これまで関わってくださった先生方、これから関わってくださるノゾエさん、大人計画さんや舞台の方々、自分のマネージャーさんや自分がこれまで生きてきた時間で一緒にいてくれた人たちは本当にいい人ばかりです。出会いや人と人との繋がりにはすごくラッキーで、恵まれていると感じています。 窪塚愛流(くぼづか・あいる) 2003年、神奈川県生まれ。2018年に映画『泣き虫しょったんの奇跡』でスクリーンデビュー。2021年より本格的に俳優活動を開始、瑞々しくも躍動的な存在感を放ち、着実に出演作品を重ねている。2024年5月に公開された映画『ハピネス』で初主演を果たす。テレビ朝日の土曜ナイトドラマ『顔に泥を塗る』が現在放送中。
山下シオン