地震大国・日本になぜこんなに原発があるのか? 「原子力ムラ」の醜悪な実態を暴く衝撃の一冊!
――昨今、マスコミによる自主的な言論統制や権力とのなれ合いはしばしば指摘されます。一方で、能登半島地震での報道を見ていると、そもそも報道機関の基礎体力が落ちているような印象も受けます。 青木 私は最近まで日本新聞労働組合連合の役員をしていたので、現場の苦しみはよく聞いています。今や、ほとんどの新聞社が人員削減や規模縮小を続けています。能登半島地震では道路の寸断で現地入りが難しかったこともありますが、そもそも被災地周辺に取材拠点がなく、記者たちが車中泊を続けていると耳にします。 この本ではマスコミの「ムラ」への寄与の大きさを批判していますが、マスコミが機能していればこそ、死者数や行方不明者数といった数字の向こう側にある現実が世間に伝わります。SNSやユーチューブではマスコミ批判が盛んにされていますが、現場の記者たちが困難に直面していることも知っていただければと思います。 福島第一原発事故で盛り上がった脱原発の機運をさらに大きくするためにも、健全なマスコミの力が必要です。 ――岸田(文雄)政権は原発回帰の姿勢が鮮明ですが、脱原発は可能なのでしょうか。 青木 首相が代わらない限りは無理だと思います。逆に言えば首相が決断すればできる。霞が関で取材していると、「日本の官僚は優秀で、トップが決めたことは確実に実行する」としばしば耳にしますが、私もそれは同感です。人命を大事にする首相が生まれるように、私たちが永田町に声を送り続けるしかありません。 ●青木美希(あおき・みき)ジャーナリスト、作家。北海道札幌市出身。1997年、北海タイムス社入社。同紙の休刊に伴い、1998年9月に北海道新聞社入社、北海道警裏金問題を手がける。2010年9月、全国紙に入社。東日本大震災では翌日から現場で取材を開始。現在も個人として取材活動を続けている。福島第一原発事故の実情を描いた初の単著『地図から消される街』(講談社現代新書)は貧困ジャーナリズム大賞、日本医学ジャーナリスト協会賞特別賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を受賞 ■『なぜ日本は原発を止められないのか?』文春新書 1210円(税込)今年1月1日に起きた能登半島地震によって、停止中だった志賀原子力発電所ではトラブルが続いている。このように、原発を続けるということは、事故が起きる可能性を抱え続けることを意味する。福島第一原発事故で、原子力事故の影響の大きさを思い知ったにもかかわらず、原発はなぜこうも優先されるのか。日本の原子力産業の歴史を俯瞰し、「原発安全神話」に加担してきた、政・官・業・学、そしてマスコミの大罪を白日の下にさらす 取材・文/柳瀬 徹 撮影/村上宗一郎