「大惨敗」乙武と「次点」須藤元気…混迷続く東京15区「無所属候補」の明暗を分けた戦いの裏側
告示前に勝負は決まっていた
「多くの方にご支援いただいたにも関わらず、当選という結果に至らず責任を感じております」 【当落一覧】次の総選挙で「落選する議員」の全実名! 門前仲町の選挙事務所に現れた乙武洋匡は失意の表情でこう述べた。前日の華やかな舞台が嘘のように沈んだ空気が漂っていた。東京15区の補欠選挙。当初は本命と思われていた乙武だったが、結果は19655票。供託金没収ラインの得票率10%を超えるのが精一杯で、5位という大惨敗に終わった。 選挙戦最終日の4月27日。豊洲での街頭演説では、小池百合子都知事、国民民主党の玉木雄一郎代表と街宣車上に並び、都民ファーストの会と国民民主党の議員や関係者も大勢応援に訪れていた。 「応援隊長」として連日のように応援に入った小池は最後の応援演説で声を張り上げた。 「本人は五体不満足ではございますけども、有権者の皆さん、納税者の皆さんには満足のいく政治を展開して参りますので、どうぞ皆さんの一票を乙武洋匡へとお託しください。もうあと一歩でございます。勝たせてください!」 だが、この時点での調査ではあと一歩どころかすでに惨敗が濃厚だった。そのため、開票結果を待つ選挙事務所には小池はもちろん、今まで応援してきた議員たちの姿はほとんどなかった。8時になると即時敗戦が決まり、その4分後に乙武は姿を現した。 大敗の原因はなんといっても自民党、公明党と小池知事による三者協力体制を作れなかったことだ。小池は自民党東京都連会長の萩生田光一衆院議員と信頼関係を強めており、1月の八王子市長選では自公が推薦する候補を小池が応援し、接戦を制した。自民党議員の不祥事で生じた今回の補欠選挙では、今度は小池が推す候補を自公が応援するという段取りで話は進められていたはずだった。 ところが、候補者選びが難航する中、萩生田に小池から「乙武でいく」と連絡が来たのは報道が出た3月29日の「前日だった」という。 この時からすでに暗雲は立ち込めていたといえる。 乙武には過去に女性スキャンダルがあったことから公明党が嫌悪感を示すのは当然だった。さらに、自民党内でも「区長選で木村弥生を応援していたような人は応援できない」「ちょっと色が強すぎる」など否定的な声が上がっていた。