西武の新体制・西口監督に石毛宏典が期待すること 低迷したチームで注目のバッターは?
【今後に期待の野手2人】 ――石毛さんは、かねてから佐藤龍世選手のバッティングを評価されていますね。目にとまったのはどんな部分ですか? 石毛 トップの位置がよくて、バットの出し方がいい。身長は高くない(174cm)ですし、体もあまり大きいほうではないのですが、バットにうまく力を伝える技術があります。使い続ければ20本ぐらい打つ可能性はあると思いますし、そういう期待感を持てるバッターだと思います。 DeNAの牧秀悟もそれほど体は大きくない(178cm)と思います。それでも打ち方がいいから、あれだけの成績が残せる。バットにうまく力を伝えられる選手には可能性を感じますよね。持論を言えば、パワーはどうでもいいと思っていて、やはり一番大切なのはバットの使い方でありタイミングです。 ――ほかに、西武で使い続けたほうがいいと思われる選手はいますか? 石毛 西川愛也です。外野の守備で安定感が出てきたという話は聞いていましたが、足がありますし、落下地点に到達するのが早い。課題はバッティングですね。トップの位置はいいと思いますが、振り出しからインパクトにかけて、グリップがちょっと体の右側に下がってくる傾向がある。 ここを改善し、大谷翔平のように下から上へ振り上げていけば、可能性を感じるバッターなんですけどね。チーム事情を考えれば、打てばレギュラーが近いという状況ですからチャンスをつかんでほしいですね。 ――石毛さんは常々、「野球は技術のスポーツだ」と言われていますね。 石毛 そうですね。なので、コーチ陣が確固たる理論を持って指導できることが前提条件です。誰も10割を打てるわけではないですし、「こうすれば完ぺきに打てる」なんてことは言えませんが、コーチがしっかりと技術を伝えながら選手と議論をしていくべきです。
【同じ過ちを繰り返さないために】 ―― 一方のピッチャー陣は、髙橋光成投手が勝てなかった(0勝11敗)ことが大きな誤算でした。前年まで3年連続で二桁勝っていた投手が1勝もできずに低迷した要因として何が考えられますか? 石毛 精神的なものは二の次、三の次です。勝てなかったというよりも、打てなかったというほうが適切かもしれません。やはりチームで戦うわけなので、勝ち星に関しては髙橋だけの責任ではないと思います。それより気になるのは、彼が肉体改造して体を大きくしたことですね。 筋トレをして食事の管理もしているのでしょうが、ボテッとしてしまって、ちょっと大きくしすぎたんじゃないかなと。その分、体のキレが鈍ってしまった部分もあるんじゃないかと思うんです。本来は二桁勝利を計算できるピッチャーですから、今季の反省を生かして復調してほしいですね。 ――成績不振の責任をとる形で、渡辺久信GМ兼監督代行と、5月末から休養中だった松井稼頭央監督は、今季限りでの退団が決まりました。 石毛 プロの世界は結果がすべてですし、責任をとらなければいけない結果だったということですね。勝てなかった要因として、勝つための戦力を現場に与えられなかったのか、監督やコーチの能力が足りなかったのか、さまざまな要因があると思うのですが、そのあたりは組閣を新しくして終わりではなく、今後、同じ過ちを繰り返さないように球団がしっかり検証しなければいけないと思います。 ――渡辺久信GМ兼監督は、選手時代から長年にわたって西武のために尽力されてきました。石毛さんとは現役時代に黄金時代を築き、苦楽を共にされた仲でもありますね。 石毛 選手としても監督としてもリーグ優勝、日本一。西武のために本当に頑張ってくれたと思います。「長い間、ご苦労さまでした」と伝えたいですね。 【プロフィール】石毛宏典(いしげ・ひろみち) 1956年 9月22日生まれ、千葉県出身。駒澤大学、プリンスホテルを経て1980年ドラフト1位で西武に入団。黄金時代のチームリーダーとして活躍する。1994年にFA権を行使してダイエーに移籍。1996年限りで引退し、ダイエーの2軍監督、オリックスの監督を歴任する。2004年には独立リーグの四国アイランドリーグを創設。同リーグコミッショナーを経て、2008年より四国・九州アイランド リーグの「愛媛マンダリンパイレーツ」のシニア・チームアドバイザーを務めた。そのほか、指導者やプロ野球解説者など幅広く活躍している。
浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo