自殺したいと思ったので「大好きな祖母」を殺すことにした…非行少年の「歪んだ認知」と「戦慄のロジック」を追う(レビュー)
傍目からは理解しがたいような理由で、簡単に犯罪行為を犯す非行少年たち。その背景にあるのは、彼らの心の「認知の歪み」である――。このことを指摘した、宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』は社会に大きな衝撃を与え、大ベストセラーとなった。 『歪んだ幸せを求める人たち ケーキの切れない非行少年たち3』は、サブタイトルが示す通り同著のシリーズ第3弾に当たる。今回の対象は非行少年だけではなく、歪んだ認知を持つ人々全てだ。 どうでもいいことで異常に怒り出す人、ネットで有名人に陰湿な嫌がらせを行う人などなど、なぜこんなことをするのだろうと思う人は日常でも数多く見かける。しかし彼らとて、何も理由もなくこうした行動に走っているわけではない。実のところ、彼らも皆と同じように「幸せになりたい」と思っているだけではないのか。ただ彼らの「幸せ」の捉え方に歪みがあるために、かえって不幸を呼んでしまっているのではないのか、というのが本書における著者の主張だ。 自殺を考えたものの、大好きな祖母が悲しまないよう、先に祖母を殺そうとした少年といった信じがたいような例から、「ちょっと濡れそうだから」程度の理由で傘を盗んでしまう者まで、確かにそこには判断や所有欲の歪みが伏在している。 他人の、そして自分の心の歪みにどう対処すべきか。人間関係に新たな視点をもたらしてくれる一冊だ。 [レビュアー]佐藤健太郎(サイエンスライター) 1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教等を経て、現在はサイエンスライター。2010年、『医薬品クライシス』で科学ジャーナリスト賞。2011年、化学コミュニケーション賞。著書に『炭素文明論』『「ゼロリスク社会」の罠』『世界史を変えた薬』など。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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