“長期投資をしても必ず儲かる保証はない”…そんな言葉に惑わされて「短期売買」に走っては絶対にいけないワケ【経済誌元編集長が助言】
「長期投資だって必ず儲かるとは限らない」という反論もある
もちろん「株式を長期に保有すれば必ず儲かるという保証はない」という反論があることは百も承知している。 個人投資家は経済や相場の知識が浅いためにバイ・アンド・ホールド(買ってそのまま保有する投資手法)こそが正しい手法だという意見に魅かれる。右肩上がりの株式相場を見れば安心、安全だという都市伝説を鵜呑みにしてしまう、というのだ。 その根拠に挙げるのが、1987~2016年の日経平均株価の推移だ(図表1)。同期間は株価のバブル形成と破裂、その後20年間の株価低迷の過程を示している。 1989年12月29日の史上最高値の前後で株を購入した人は、この原稿を書いている2024年1月初旬の時点でも株価が買値を上回っていない。金融のプロの世界においても時々語られる言説だ。 この理屈からすれば、たしかに株式は「長期に持っていても儲からなかった」といえるかもしれない。
「長期的な保有は儲からない」説が間違っている3つの理由
しかし、こうした見方は当を得ていない。まず、そもそも日経平均はハイテクの成長株が中心の株価指数であり、推奨する業況トップ企業の割安株は、こうした株価指数とは異なる変動をしたものもある。 個人投資家が生涯で買える株はせいぜい十数銘柄であり、そのパフォーマンスを株価指数全体の動きで議論するのはミスリードである。 第二に「儲かる、儲からない」の基準が間違っている。懐疑論者は値上がり益を判断基準にしているが、本書で推奨する投資手法は、老後の生活資金を補充するために、高配当利回りを獲得することを狙っている。値上がり益はあくまで“ボーナス”との位置づけだ。 配当の利回りが預貯金など他の競合商品を上回っていれば「儲かっている」と判断するのが妥当である。もし他の競合商品が配当利回りを上回っているのであれば、株式投資は見合わせる。老後の生活資金の補充は他の金融商品に任せるべきだ。 もちろん株式投資なのだから値上がり益という“ボーナス”があるに越したことはないが、それがないからと言って失敗と決めつけるのは間違っている。「儲かる、儲からない」はあくまで相対的な判断だ。 万一、値下がり損が生じた場合は、墓場まで持っていけばよい。家族に遺産相続すれば、喜ばれることはあっても恨まれることはない。 最後の理由は分散投資という考えを無視していることだ。「長期投資は儲からない」のは、バブルのピークに株をまとめ買いした“極端な”人の場合である。こういうことが起きないように、買いのタイミングを散らす分散投資を推奨している。 たとえ株価が下落していたとしても、一定の間隔で少しずつ買い増していけば、平均の買いコストが下がる。その間に、高利回りの配当金が入っているのであるから問題はない。 読者は「長期に持てば必ず儲かるという保証はない」という危うい考えに惑わされて、くれぐれも短期売買に走ることのないようにしていただきたい。 川島 睦保 フリージャーナリスト、翻訳家 ※本記事は『一生、月5万円以上の配当を手に入れる! シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
川島 睦保