BRICSは政治目的の写真撮影会に成り下がった──BRICS市場の造語で最初に脅威と警告した経済学者
<かつてはBRICSが世界経済を支配する存在になると予想して名を馳せたものだが>
欧米への対抗軸として創設された非公式な同盟であるBRICSには象徴的な意思表示以上の存在意義がほとんどなく、ロシアで開催されている首脳会議の主な成果は首脳の「集合写真」だけになるだろう――BRICSの名付け親として知られる経済学者がこう指摘した。【ヒュー・キャメロン】 【動画】軍用車に乗って現れた中国軍、石を投げて抵抗するインドの遊牧民...国境での「衝突」緊迫シーン ロシア中部タタルスタン共和国の中心都市カザンで10月22日~24日までの日程で開催されている毎年恒例のBRICS首脳会議には、BRICS創設国の指導者たちに加えて加盟候補国の要人たちが出席している。毎年この会議ではBRICSが提唱する世界経済の秩序に関するビジョンが示され、開催国ロシアにとっては西側諸国による制裁や地政学的・外交的な孤立にも負けない強さを示す機会となる。 この首脳会議について、英経済学者のジム・オニールは10月17日に国際論評・分析サイト「プロジェクト・シンジケート」への寄稿の中で、「毎年恒例のBRICS首脳会議は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のような政治指導者がアメリカ主導ではない世界のビジョンを推進する理想的な機会だ」と述べた。「だがこの会議は毎年、象徴的な意思表示や高尚なレトリック以外には実質的な目的を果たしていない」
サウジが二の足を踏む意味
現在イギリスの上院議員でもあるオニールは、2001年に書いた報告書「Building Better Global Economic BRICS(より良い世界経済を築くBRICS)」の中でBRICSという造語を使い、BRICSの「名付け親」と呼ばれてきた。この報告書の中でオニールは、2006年にBRICSを創設した新興経済国のブラジル、ロシア、インドと中国が2050年までに世界経済を支配するようになるだろうと予想した。 だがオニールは今では、BRICSが主に政治目的の組織へと変貌し、G7以外の国による西側諸国への対抗心を表す以上の意味をほとんど持たなくなっていると考えている。 新規加盟国のエジプト、エチオピア、イランとアラブ首長国連邦が参加している今年の首脳会議は、とりわけ政治的メッセージが強調されるものになるだろうとオニールは指摘。「プーチンが今年の首脳会議を、西側諸国が思うほどロシアが孤立してはいないことを世界にアピールする場として利用するのは間違いないだろう」と書いた。 オニールはまた、BRICS加盟の招待を受けて当初は前向きだったサウジアラビアが、今は気が進まない様子になっていることは、BRICSが依然として二流の組織である可能性が高いことを示唆しているとも指摘した。 「サウジアラビアは依然としてアメリカとの防衛・安全保障同盟を重視している」とオニールは書き、こう続けている。「今後サウジアラビアがイスラエルとの関係を正常化することがあれば、これらの結びつきはさらに強化されるだろう」