1軍打撃チーフコーチに就任した小谷野氏（右）は笑顔でガッツポーズ（西宮市内）（撮影・西尾就之）

　チェック、チェック、チェックで虎の課題あぶり出す！　来季から阪神の1軍打撃チーフコーチに就任する小谷野栄一氏が（44）が就任会見を行い、打力アップへの抱負をエネルギッシュに語った。 【イラスト】阪神来季スタッフ 　「1人1人の今年までの打席の映像を全部確認してからじゃないと、選手に失礼になってしまうと思う」 　自らに課したのは全選手、全打席の映像チェックだ。2軍選手ももちろんその対象。今季1軍のレギュラーシーズンは143試合で5335打席、2軍は130試合で5003打席ある。野手全員の全打席を見るとなれば、気の遠くなる膨大な作業だ。それでも当然といった表情で続ける。 　「それぐらい選手も覚悟を持ってやってくるので、そこをサポートする側もそういうところを打ち込んで、勉強してから取り組みたいと思います。じっくりオフシーズンを利用して、それはどこのチームにいても、もう1回確認するのは一緒だと思う」 　20年から今季までオリックスのコーチを務め、リーグ3連覇に貢献。常勝軍団づくりをサポートした豊富な経験を今度は虎に注ぎ込む。今季の阪神はリーグ制覇した昨年の555得点から70得点減り、本塁打も17本減で15年の143試合制後球団最少の67本塁打にとどまった。ほぼメンバーは昨季と同じだったが、どこに課題があるのか。まずは観察を徹底し、個々の長所短所を把握してから指導にアレンジしていく方針だ。 　昨年の日本シリーズでは阪神に敗れた立場。「いやらしいと思いましたよ。切れ目がないと思って対決していました」。敵として感じた強力な打線を復活させ、進化させたい。森下や大山、佐藤輝らの伸びしろをもっと開花させてやりたい。日本ハム時代の10年に打点王に輝いた極意も惜しみなく伝えていく。 　嶌村球団本部長は「監督の方から小谷野さんの名前が出た」と招聘（しょうへい）の舞台裏を明かした。藤川新監督とは同じ80年生まれの「松坂世代」。指揮官から「力になってくれないか」と言葉をもらい「藤川監督がやるからこそ新たにチャレンジしたい」と覚悟を固めた。藤川阪神の得点力アップは、この男にかかっている。【中野椋】 　◆小谷野栄一（こやの・えいいち）1980年（昭55）10月10日生まれ、東京都出身。創価－創価大を経て02年ドラフト5巡目で日本ハム入団。10年に109打点でタイトルを獲得するなど、中軸打者として活躍した。15年にオリックスへFA移籍し18年に引退。通算1394試合、1260安打、71本塁打、566打点、打率2割6分4厘。現役時代は177センチ、88キロ。右投げ右打ち。引退後は楽天、オリックスでコーチを務めた。