【レビュー】『室井慎次 生き続ける者』全てがつながる…人々の心に深く刻まれる室井の生き様
映画2作目『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の犯人の1人が殺された、今作での事件もそうだ。彼がかつて管理官として臨場していた湾岸署で面識のあった緒方薫(甲本雅裕)が捜査一課の刑事として登場し、室井への尊敬を全身で体現した。捜査一課の桜章太郎(松下洸平)は、沖田(仁美/真矢ミキ)に直接電話してまで室井を捜査に巻き込んだ。室井の助言と行動は、実際に事件捜査に役立っている。それは、過去の室井の行動と思考の結果だ。 おそらく室井は、警察官僚だった当時、青島との“約束”を実現するために、組織の中で奮闘していたはずだ。画には描かれていないが、彼は日々、円卓会議の重圧に耐え、隠ぺい工作など無理難題に耐え、上層部の理論ではなく現場の理論で仕事ができる環境を作ろうとまい進していたのだろう。青島に「正しいことができないんだ。自分の信念も貫けない」とこぼしたこともあるが、階級も所属も関係なく、捜査会議の席で全員に意見を募ったりもした。現場の正義を貫く青島に「おまえに託す」とし、捜査員に自身の判断で動くよう指示、責任は自分がとると明言した。そうして、少しずつ、組織にくさびを打ち込もうとし、針の穴より細くとも実際に打ち込んできた。そしてそれは、新城や沖田にも飛び火し、脈々と受け継がれた。
まさに“生き続ける”。所轄の一捜査員である和久平八郎(いかりや長介)と吉田副総監(神山繁)が若かりし頃につないだ思いは、「室井さん、命令してくれ。おれはあんたの命令を聞く!」と叫ぶ青島とそれを受けて直接命令を下す室井に受け継がれた。そして室井は「生きる力を持て」と子どもたちに語り、上っ面な言葉ではなくその生き方で、子どもたちに意志と思考を伝える。子供たちが確実にその思いを継いでいることは、タカが考える将来の夢を知った我々には、自明の理だ。さらに沖田と新城は、より現実的な形でそれを形にしようとしている。
全てがつながっているのだ。室井の人生の証が、今回の2作に詰まっていた。「踊る」という物語の軸をなす青島と室井の“約束”は、生き続けている。(文:早川あゆみ)