ジャズを愛し、愛されて 山形・喫茶「OCTET」、相沢さんが日本協会功労賞
JR山形駅近くの山形市幸町で、半世紀以上店を構えるジャズ喫茶「OCTET(オクテット)」のマスターを務める相沢栄さん(85)=同市小白川町4丁目=が、ジャズ界の興隆と愛好者の拡大に努めたとして、日本ジャズ音楽協会(東京)の功労賞を受けた。多くのレコードを流してファンをうならせ、海外アーティストを県内に相次ぎ招聘(しょうへい)するなど、ジャズ文化をけん引してきた。「とっつきにくいと思われるが、素晴らしい音楽。扉を開く人になりたい」。ジャズへの愛情を一途に語る。 1958(昭和33)年、当時住んでいた東京でジャズ喫茶と出合った。山形市に翌年戻り、自動車関係の会社に就職。7500円の月給で1700円のレコードをこつこつ買い集めた。市内のナイトクラブのトランペット奏者と偶然知り合い、ジャズを教えられてのめり込み、勧めもあって71年に店を開いた。相沢さんによると、市内では当時5軒目。他の店は現在畳むなどしており、OCTETは貴重な存在となっている。
木調の店内には約8千枚のレコードが並ぶ。かつてはコアなファンが多く、客から店にない曲をリクエストされるのが悔しくて数が増えた。時代が変わり「熱心に聞く人は少なくなった」とさみしさを口にするが、「今も常連客や全国から訪ねてくるジャズファンと音楽を語り合えて楽しい」。 店ではジャズ講座を毎月開き、初心者にも手ほどきする。店に10年以上通う辻佳宏さん(77)=同市漆山=は「マスターは知識が豊富で愛情深くジャズを語る。客はそこに引かれて来るんじゃないかな」と話す。 国内外のアーティストを招いたコンサート企画にも精力的だ。新型コロナ禍前は、ジャズを聴きに毎年3回ほど米ニューヨークを訪れ、いいと思ったアーティストをプロモーターを通じて山形市民会館などに呼び寄せた。米ジャズ界の巨匠でドラマーの故アート・ブレイキーさん、相沢さんが心酔するサックス奏者故ズート・シムズさんらのほか、初来日を実現させたアーティストも。世界的に活躍するピアニスト秋吉敏子さんとは長年交流し、昨年も市内でコンサートを開催した。サックス奏者渡辺貞夫さんとも親交があり、毎年のように山形に招いている。
表彰式は先月23日に東京で行われ、長年の功績がたたえられた。「好きなことを突き詰める生き方はジャズから学んだ。死ぬまで続けたい」。11日に市民会館で開かれた同館のロビーコンサートシリーズ「ジャズ喫茶」では講師を務めた。奏者によって曲の味わいが変わる面白さを伝え、「ジャズは飽きることのない、終わることのない世界」と市民らに語りかけた。ロビーコンサートは12日も開かれる。