パリオリンピック男子バレー 日本を守備で支える山本智大はなぜいつも笑っていられるのか
【ブロックフォローで世界に差をつける】 たとえば1セット目、山本がたて続けに拾うと、石川祐希のクロスへのスパイクにつなげ、15-11とリードを広げた。2セット目終盤には、山本が続けてディグに成功した展開で、石川のバックアタックが決まり、逆転の口火をきっている。腕1本でアルゼンチンをたじろがせた。 派手なディグだけではなく、堅実にブロックフォローを入ることで、守りに厚みを与えていた。 「僕の役目は、点数が離れようが、近かろうが、ボールを落とさないことなので。ディグだけじゃなく、ブロックフォローとか、レセプション1本にしても、4セットを通じてしっかりと戦えたのが、勝因につながったと思います」 山本は笑顔で言うと、こう続けた。 「僕自身、今日のテーマはブロックフォローだったので。しょうがないボールはあるんですけど、しっかり浮いたボールは絶対取れるはずなので、ひとりひとりがしっかりとサボらない意識を持って、マネジメントするようにうしろから声をかけてやっていました。ドイツ戦と比べて、ブロックフォローからの展開が修正されたのかなって思いました」 ――めちゃめちゃ、楽しそうに見えました。 そう問いかけると、山本は即答した。 「そうですね(笑)。1試合目(のドイツ戦)から僕は楽しんでいるんで。もちろん、プレッシャーもあるんですけど、楽しみながらバレーするようにしています」 楽しむ。それは競技者としての異能である。 「僕は、"ブロックフォローだけをしっかりやれば問題ない"と思っていたので。レセプションも、ブロックディフェンスも、とてもいいチームだと思っているので、日本の強みはやっぱりブロックフォローから点数が取れること。"そこで世界と差をつけていかないと"と思っているので、練習のなかでも『ブロックフォロー』と口酸っぱく言ってやるようにした結果、数本、取れました。練習の成果が見られたと思います」 山本は守備者としてさらなる変身を遂げ、チームを勝利に導いている。
大会前のインタビューでリベロの矜持について訊ねると、彼はこう答えていた。 「リベロは"熱く冷静に"っていうのは心がけていますね。熱くなるところはいいけど、うしろから見えなくなったらダメだし、"自分が舞い上がってしまったら誰がチームをまとめるんだ"って思っているので、落ち着いて見るようにしています。ほかの人以上にボールを拾って、アグレッシブなプレーも大事だし、ボールを触れない時も、周りをどう助けるか」 俯瞰しているからこそ、その中心にいる彼自身は笑っていられるのかもしれない。 「打てるもんなら、打ってこいよ!」 アメリカとの決戦でも、リベロが笑う。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki