首長「正確な情報ないと適切な対策できない」、専門家「行政は、できないことはできないと言うべきだ」:放置された浄水場の耐震強度不足(4)
過密都市・東京の脆弱性を認識すべきだ
地震災害の軽減に取り組んできた福和伸夫・名古屋大学名誉教授(地震工学)は、約1400万の人口が密集する東京で水供給が停止した場合のリスクについてこう語る。 「他府県から給水車を集めるといっても、日本全体で給水車は1000台ほどしかないので、到底足りません。地方ならば井戸や湧き水も利用できますが、東京ではそれもできない。一軒家ならば雨水を集める手がありますが、マンションは悲惨です。特にタワーマンションの高層階などは、水道が無事でも電気が止まれば水を送り込めませんから、最も脆弱です」 浄水場をはじめとしたインフラ設備も、東京の人口が多すぎるために、巨大な「中央集約型」にならざるを得ない。しかし、こうした設備はひとたび災害などで停止すれば被害が広範囲に及び、復旧も容易ではない。これに対して、小型の設備を離れた地点に複数設置する「分散型」のネットワークのほうが、災害が起きた時にどこかが停止しても被害が及ぶ範囲は狭く、他でバックアップすることが可能になる。 こうした問題に対する解決策は、東京に過剰に集中した人口を地方に分散させること以外にないと、福和名誉教授は語る。 「何かあった時に1400万人分の水を運ぶことは不可能なわけですから、そもそも1400万人も集まって住んではいけないわけです。この問題を解決するには、人口を地方に分散させて東京を小さくすればいい。適正な規模は200万人程度ではないでしょうか。どちらに住むべきかといえば、地方のほうがいろいろなものが中央集約型ではなく分散型になっていますから、より安全です」 東京の人口を減らす──というと極論に聞こえるかもしれないが、政府が2023年7月に閣議決定した第3次国土形成計画にも、次のような記述がある。 <東京への人口、諸機能の一極集中構造は、巨大災害リスクへの脆弱性を露呈させる。切迫する首都直下地震等により、甚大な人的被害の発生はもとより、サプライチェーンも含めた経済面において広域かつ長期にわたる甚大な被害の発生が想定されている。> <国土全体にわたり人口や諸機能の広域的な分散を図り、東京への過度な集中を是正することは喫緊の課題である。> 一人ひとりの防災への意識を高め、浄水施設を始めとしたインフラの強化に抜本的な策を講じるべきなのか。はたまた、「元凶」である東京一極集中の是正にこそ取り組むべきなのか。どちらにしても、「現状維持」が最も危険であることを認識すべきだ。 取材・文:POWER NEWS編集部