「日本のアニメーター」が中国や韓国に引き抜かれている…意外に知られていない「縦読み漫画」の最新事情
ウェブトゥーンをご存じだろうか? 昨年7月1日Lineマンガを傘下に持つ韓国のWEBTOON Entertainment Inc.が米ナスダックに上場、30億ドル弱(約4500億円)を集め、話題となった。 【マンガ】メルカリで、利益がほとんどでない「300円出品」をする人の理由 ウェブトゥーンはスマフォの画面に特化した、縦スクロールの漫画だ。韓国で発明され、世界に広がった新しいタイプの漫画であり、日本の漫画が欧米のコミックと違うように、漫画とウェブトゥーンは表現の違いや題材に違いがあり、似て非なるものである。 日本でウェブトゥーンの制作や普及を行っているロケットスタッフ 株式会社 代表取締役社長 高 榮郁氏に現状を聞いた。
日本の漫画が読めないウェブトゥーン世代
高氏が韓国の若手漫画家の勉強会に参加した時のことだ。漫画の演出の話を聞きに行ったら、漫画の読み方の話になったのだそうだ。 「韓国や中国の20代の前半の人たちはウェブトゥーンに慣れすぎて、マンガを読めないんですよ。下手したら古語みたいなもんですよ。勉強しないと読めない」 ウェブトゥーンは、韓国ではそこまで根付いている。 「なんでここまでも韓国ではウェブトゥーンが浸透してるの?と聞いて、そこからいろいろ掘り出してみたら作り方から何もかも違うわけです」 日本の漫画は1ページいくらで計算する。20ページ描いて、20~30万円、有名な人は何百倍かもしれないが、基本はページ単価だ。作り方も、まずネームという、コマ割りしたページにセリフの入ったコンテを書く。作家が顔と体を描いて、アシスタントが背景を描いて、一番下っ端が群衆を描いて、といった流れで作業する。 「ウェブトゥーンってどっちかっていうと、アニメの劣化版です。アニメの作り方をもっと手抜きしたものですね。だから作り方はまるで違うんです。韓国のウェブトゥーンだと最初にキャラクターデザインをします。キャラクターデザインをするときに3Dモデルを一緒に作ります」 ウェブトゥーンは漫画のようなコマ割りがない(縦スクロールなので、四コマ漫画が延々と伸びて60コマ漫画になるようなイメージだ)ので、ネームにエネルギーを使わない。あらすじができた段階でキャラクターや舞台をすべて3Dモデルで作る。同時並行でシナリオを作り、それをコマに割り振っていく。これがネームになるが、コマのサイズは同じなので、アニメの絵コンテに近い。 「ウェブトゥーンでは、ネームに合わせて背景を3Dではめ込みます。ロケ地みたいなものです。その後、さっきキャラクターの3Dモデルをそこに合わせます」 この作り方は、ほぼ3Dアニメだ。違うのは動画ではなく静止画だということ。作り方が違うとギャランティの考え方も変わってくる。日本の漫画の場合、掲載期間が長く、読者の人気が高くなればそれだけ1本あたりのギャラは増える、単行本も出て売れる。つなり人気が出て連載が長くなれば、それだけ儲かるようになるわけだ。ウェブトゥーンの場合はどうか? 「最初に3Dモデルと背景を作るので、ようは素材を全部作り置きをする。なので、最初が一番高い。そして連載が続けば続くほど製作費は安くなります」 日本の漫画とは真逆の構造である。