岸博幸氏「高齢者の社会保険料」一律支援は限界だ 治療の費用で実感したこと
昔みたいに企業が社員を支えられるならいいけれど、もうそういう時代じゃない。そう考えると、やっぱり政策や価値観などを、企業中心の仕組みから個人にフォーカスした形に変えていかないと、成熟した先進国になれないんじゃないという気はしています。 ■自分で稼ぐ力を強化する必要 ――日本は、成熟した先進国になれるのでしょうか。 それが……言うは簡単で、実際に政策や制度を変えるのは大変なんです。 だから、個人から変わっていかないといけない。幸い、今の若い人たちは2~3年で会社を辞めるし、フリーランスも増えている。これはいいことだと思うんです。
自分が病気になって思うのは、やっぱり金は稼いでおいたほうがいい。そのためには、稼げるように生産性を上げないと。個人的にはこの部分がいちばん大事だと思っています。 春闘で「5%くらい賃上げがあってよかったよね」って言っているけれど、違うんじゃないかな。物価が上がれば賃金も上がるって勘違いしやすいんだけど、経済学的には、賃金はその人の生産性に比例することがわかっています。 残念ながら、日本人は生産性がとても低い。だから、まずは自分で稼ぐ力を強化していかないとダメです。
――そうはいっても、どうすれば生産性を上げられるのか……。 実は生産性を上げるってそんなに難しいわけじゃなくて、早い話が、イノベーションを作り出せばいい。そのためにも、ルーティンワークはできるだけ早くすませて、その分をアウトプットに充てるべきなんですね。 さらに言うと、ルーティンワークを手早くすませるためには、デジタルを使いこなす必要があるけれど、反対に、クリエイティブな仕事をするためには、デジタルを使いすぎると失敗する。やっぱり自分の頭で考えないとだめです。
今の時代は、何かあるとすぐネットでみんな調べるじゃないですか。これをやってると、自分の頭で考えることができなくなっちゃう。そういう人は新しいアイデアを出せなくて、結局ネットの情報の受け売りで終わっちゃいます。 いろんな研究で証明されているけれど、本をじっくり読むとか、デジタルがまったくない環境のなかで自分の頭で考えるとか、そういうことをやるといいと思います。 ――言うはやすくという感じです。 使っちゃダメって言っているわけではなくて、デジタルを使いこなす部分と、デジタルから離れる部分の両方を強化することが大事です。