岸博幸氏「高齢者の社会保険料」一律支援は限界だ 治療の費用で実感したこと
例えば、高齢者。今は自己負担率が1割か2割で、現役世代よりも安いでしょ。これって本来はおかしいんだよね。だって、高齢者のほうが金融資産を持っている割合が大きいんだもん。 だから、高齢者を一律にするんじゃなくて、基礎年金だけで生活されている高齢者は徹底的に制度で守り、資産を持っている人には年齢に関係なく、それなりに負担をしてもらう。彼らまで同じように守るのには、無理があります。 ■昭和のモデルはもう通用しない
――社会保険料がどんどん上がって、現役世代は本当に苦しいんです(涙)。 それに関して言うと、僕は病気になったことで自分の人生を反省し、生き方を変えたけれど、日本も、若い人たちも変わっていかないとまずい。 日本は高度成長期以降、企業が中心となって経済を回してきた。個人じゃなくてね。それでもあの当時は人口も経済も右肩上がりだったから、何とかなっていたんです。 終身雇用も、源泉徴収も、健康保険もすべて企業が中心だった結果、みんな自分のためではなく、“企業のため”に動くようになった。
ある意味、これは途上国型モデルですよ。日本は人口減少が始まって13年。成熟した国になった今、昭和の頃のモデルが通用するはずがないんです。 ――令和になっても、昭和モデルのまま? そう。特に失われた30年の影響で、経済がこれだけ弱くなってしまった今、日本は企業中心の価値観を、個人中心に変えていかないとダメです。 国の成長を表す指標にGDP(国内総生産)ってあるでしょ、あれ、日本は4位に落ちたって騒いでるけど、実は一人当たりGDPは34位で、G7のなかでビリなんです。加えて、国別の幸福度ランキングも日本は47位でえらく低い。
もう1つ意外と知られてないデータがあるんですが、所得税を払っている人のうち、年収330万円未満の人ってどれくらいいると思います? 8割なんですよ。先進国のはずなのに、5人中4人が年収330万円未満。地方なら年収300万円以下で暮らしている人たちもいる。 日本ってとことん貧乏で、とことんハッピーじゃない国になっちゃったんです。もう少し個人の収入が増えて、幸せになれる国にしないとダメっていうのは、入院中にすごく感じたことです。