「小池百合子が“刑事事件の犯人”として知事室で執務する可能性」「蓮舫が当選しても無効なる恐れ」…日本の政治の「劣化」を象徴する都知事選の「パラレルワールド」
私欲を貪る経済界に責任がある
まさに、日本の政治がいかに「劣化」してしまったか、を象徴する事態だ。本来なら「それでも棄権するな」と呼びかけるのが物書きの作法かもしれないが、ここまでくると、私は投票率が劇的に下がったとしても、有権者を批判する気持ちにはなれない。 なぜ、これほど堕落してしまったのか。 私は「政治家と官僚、マスコミ、大企業を中心とした経済界に大きな責任がある」とみている。彼らは国民を真実から遠ざけ、持ちつ持たれつの関係を築いて、互いに自分たちの利益を貪ってきた。その結果、政治は普通の国民からかけ離れた縁遠い話になった。 小池氏の学歴詐称疑惑も、自民党の裏金スキャンダルも本質的には同じだ。「どうせ政治の世界はそんなもの」というような、諦めにも似た受け止め方が広がってしまった。 政治が国民の願いや疑問に答えないまま「きれいごと」や「建前」に終始しているうちに、いつの間にか、世間の常識や実生活から離れて「嘘でもデタラメでも、法律に触れなければ、なんでもOK」という異様な「パラレルワールド」が繰り広げられる世界になってしまったのである。
落ちるところまで落ちなければ、復活もない
同じような現象は欧米でも進行中だ。 米国のドナルド・トランプ前大統領は一握りの政官財界勢力を、米国を動かす「ディープ・ステート」と非難して、大統領選を優勢に戦っている。わずか44日の超短命政権に終わった英国のリズ・トラス前首相は「行政国家に倒された」と述懐している。 彼女は「小さな政府」を訴え、半世紀ぶりの超大型減税を打ち出したが、それに猛反対する官僚や政治家たちに引きずり降ろされてしまった。 先の欧州議会選では、保守勢力が大きく議席を伸ばした。だが、たとえば、マリーヌ・ルペン党首が率いるフランスの国民連合(RN)は、つい10年前まで「排外主義のトンデモ政党」とみなされていた。支持拡大は、膨大な移民流入に有効な対応策を打ち出せなかった歴代政権の失政に対する反動である。 11月の米大統領選でトランプ氏が復活すれば、欧米の保守勢力は勢いづくだろう。 日本の政治が「見るも無惨な状態」にあったとしても「いまは大変革の只中なのだ」と考えれば、不思議ではない。落ちるところまで落ちなければ、復活もないだろう。ただし「底がどこにあるのか」は、まだ誰にも見えない。
長谷川 幸洋(ジャーナリスト)