日本の動画コンテンツ市場、どう勝ち抜くか(6)AbemaTV
インターネットテレビ局「Abema(アベマ)TV」は、テレビ朝日とサイバーエージェントの合弁事業として2016年4月に開局した。現在、ニュースやスポーツ、アニメなど約20チャンネルの動画が無料で24時間視聴できるほか、動画コンテンツのオンデマンド配信も展開。スマホアプリは2018年5月に3000万ダウンロードを超えた。AbemaTV編成制作本部制作局長の谷口達彦氏(35)は「マスメディアへの挑戦権が得られるようになった」と語る。 【グラフ】日本の動画コンテンツ市場、どう勝ち抜くか(1)動画はネットで観る時代に
「テレビ局の論理」から生まれたサービス
──サービス開始からここまでの評価はいかがでしょうか。 谷口 手応えはすごくあります。AbemaTVは「テレビ局がNetflix(ネットフリックス)などのサブスクリプションサービス(定額料金で見放題になるサービス)にどう立ち向かうのか」というテレビ局側の論理から生まれたサービスです。これまでありそうでなかった配信形態ということで、世間に定着しない可能性も危惧していましたが、おかげさまで着実に伸びつつあります。一昨年末には、WAU(週間アクティブユーザー)が約600万を超える週が出始め、今では超える週が多くなりました。マスメディアへの挑戦権が得られるようになったと考えています。 ──AbemaTVが考える「マスメディア」とは何でしょうか。 谷口 まず、視聴者の多さが必要です。多くの人に観られていないとマスメディアではないと思います。今はインターネット上で1000万WAU以上のユーザーを集めるサイトはほとんどありませんので、1000万WAUを目標に置いています。将来的には2000万WAU、3000万WAUと、さらに拡大しなければなりません。それに加えて「AbemaTVなら面白い動画コンテンツが絶えずあるだろう」という信頼感を得なければなりません。最終的には、ユーザーの皆さんが手癖のようにAbemaTVアプリを開く、という視聴習慣が定着するようなところまで持っていきたいですね。全世代に支持されなくても構いません。特に、10代から30代にかけての若者に支持されるメディアでありたいですね。 ──マスメディアになるためには何をすべきだと考えていますか。 谷口 元SMAPの稲垣吾郎さんや草なぎ剛さん、香取慎吾さんが72時間の生放送に挑んだ「72時間ホンネテレビ」や、元プロボクサーの亀田興毅さんに4人の素人が挑戦する「亀田興毅に勝ったら1000万円」など、皆さんの話題の中心になるような手応えあるオリジナル番組を制作しました。また、将棋や麻雀、相撲の中継も行っており、それらの分野のファンを捉えるとともに、若者層にも視聴者層が広がりました。マスメディアを目指す上で、これらのアプローチは間違っていないと考えています。 ──「72時間ホンネテレビ」の話が出ましたが、マスをとるための戦略としてバラエティーに力を入れていくイメージでしょうか。 谷口 あの番組自体バラエティーではなく、3人が今まで触れていなかった新しいデバイスを使って番組を作り、それを日本中が見守ったドキュメンタリーだったと思っています。なので、バラエティーというカテゴリでくくるのではなく、共感とリアリティーを意識して制作しています。 今放送している「Popteenカバーガール戦争」も、番組自体はバラエティーっぽいつくりですが、内容はティーンNo.1ガールズファッション誌の「Popteen」 で表紙を目指す11人の少女による青春リアリティショーなのです。まだ何者でもない彼女たちが全力で青春を生き、切磋琢磨しあいながら成長する姿は多くの人の心に訴えかけるものがあります。こうした共感を生むようなリアリティを描く番組作りに注力したいと思っています。