町田樹、上野水香、高岸直樹の3人が共演!「フィギュアスケートとは全然違う」町田樹が語るバレエの難しさ
──実際に、町田さんが考える振り付けをやってみていかがですか? 上野:ずっとバレエをやってきた振付家だとこうはならないなという動きもあったりして。こう来たか!って思うようなところもあるんです。柔軟な感性で創っていらっしゃるから新鮮ですごくおもしろい。だけど、振りの中にはわたしが得意とする動きが印象的に使われていたりします。知らずに考えていらっしゃると思うのですが、やっぱり共鳴するものがあったのかなと思いますね。 町田:波長が合うといいますか、何もいわずとも、合っているなと思うことがあります。上野さんもそう思ってくださっているなら嬉しいですね。 フィギュアスケーターは男も女も変わらない靴を履くわけで、そこでジェンダー差はない。ところがバレエになると、女性はトウシューズを履きます。僕はトウシューズを履いたことがないから、実際にどういう動きができるのかは試してみなとわからないわけです。踊ってもらうと、ちょっとできないな、違うなっていうこともあったりする。そういった点については対話を重ねて創っている最中です。 フィギュアもバレエも足の芸術であることは変わらない。でもやっぱりその足の使い方や様式っていうのがやっぱり全く違うんです。フィギュアスケートは言ってみればスキーブーツのように足首が90度で固定されているような状態。足の先に1キロの重りがついてるような状態なんですが、その振り子を使ってダイナミックな滑りをするわけです。ところがバレエはもっと細やか。まずそれが全然違うんです。
上野水香の神聖なまでの美しさを伝えたい
この日、2人が取り組んでいたのは「Widmung 献呈」と題した演目です。 ──この作品に込められた思いは? 町田:上野水香という一人のダンサーが、ダンスという文化そのものに自らの心と身を捧げるというコンセプトです。先日「上野水香 オン・ステージ」を拝見したのですが、 彼女の魅力やダンサーとしての特質みたいなものは、何を踊っていてもにじんでいるなと思いました。そこで感じたイメージを膨らませて形にしているところ。さらに私自身が上野さんから引き出したいと思う部分もあって、それが際立つようなことを考えています。 ──先ほどの練習では「華やかさを消してください」とか「感情は出さずにやってください」という指示が飛んでいましたね。 町田:この「Widmung 献呈」というプログラムは意味をもたないただ純粋な“踊り”でもあります。あたかも上野水香自身の体の動きから音が奏でられてるんじゃないかって錯覚させるような作品を目指したい。そしてこの作品は、彼女の人生を投影するようなものでもあると思っています。何十年もバレエをやっていて、ある意味それに特化する体に進化しているわけです。それはもう神聖ともいえるもの。畏敬の念さえ感じさせます。この公演ではそんな部分をお見せできればと思っています。 高岸さんや水香さんとの友情、そしてさまざまなな応援に最大限感謝しながら踊りたいと思っています。