無念のスコアレスドローで開幕…なぜ川崎Fの新システム「4-3-3」は機能しなかったのか?
フロンターレが喫した6敗は、優勝した横浜F・マリノスの8敗よりも少ないリーグ最少だった。それでも勝ち点では逆に10ポイント差をつけられ、今シーズンのACL出場権すら得られない4位に終わった理由を突き詰めていけば、言うまでもなく引き分けの多さに行き着く。 しかも、12の引き分けのうち9つをホームで喫していた。サガンとは7月7日の第18節で、シュート数で10対4と圧倒しながらスコアレスドローに終わっていた。ゆえに「以前にも見たこと」を意味する、フランス語のデジャブが脳裏に浮かんだわけだが、昨シーズンと異なる点も2つある。 まずはシステムだ。基本陣形だった[4-2-3-1]を、オプションのひとつにしていた[4-3-3]に変えた。3トップとアンカーを底とする逆三角形型の中盤の3人が、前線から激しくプレッシャーをかけ、ボールを奪うや素早く仕掛ける形を攻撃パターンのなかへ取り入れるためだ。 フロンターレのストロングポイントは、風間八宏前監督時代の4年半で植えつけられた技術とイズムを土台にしたポゼッションスタイルとなる。鬼木監督のもとで融合された、攻守の切り替えの速さと球際の激しさが連覇となって花開いたが、3シーズン目となるとさすがに相手に研究される。 昨年11月に左ひざの前十字じん帯を損傷した大黒柱のMF中村憲剛はリハビリ中で、連覇に貢献したDF奈良竜樹は鹿島アントラーズへ、MF阿部浩之は名古屋グランパスへそれぞれ移籍。それまでの路線を継続しながら、変革させる部分も必要な段階が訪れたと指揮官も判断したのだろう。 中盤はアンカーに下部組織出身の21歳で、昨シーズンのベストヤングプレーヤー賞に輝いた東京五輪世代の田中碧を起用。インサイドハーフの一角には阪南大学から加入して3年目の脇坂泰斗が配置されるなど、昨シーズンに十分な経験を積んだ、連覇達成時とは異なる選手たちが新たなポジションに挑戦している。現時点での新システムの完成度を、指揮官はサガン戦後にこう語っている。 「自分たちが取り組んできたことを、スタートから必死に出そうとしてくれた。そのうえで、選手たちには『相手が嫌がるところへ、ボールをどれだけ入れていけるかだ』と話している。自分たちにとっても危険なプレーではあるんですけど、怖がることなく選択したときにチャンスが生まれるので」