「富士山の魅力を一文で」どんな条件を加えればAIは名作コピーを生成できるか
業務効率化やアイデア創出など、ビジネスでも多目的に活用されている生成AI。日常的な言葉による指示で利用できるため、利便性は極めて高い。とはいえ、その性能を十分に引き出すには「言葉の選択肢とその選び方」が重要だと、生成AI開発に従事する言語学者・佐野大樹氏は語る。本連載では、佐野氏が言語学の知見から生成AIとのコミュニケーション法を考察した『生成AIスキルとしての言語学――誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書』(佐野大樹著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。 第5回は、より目的に合致した回答を得るには、生成AIへの指示や質問をどのように伝えるべきかを解説する。 ■指示/質問の説明で変わる生成AIの生成プロセス 指示/質問の説明は、生成AIに何かを行わせたり回答させたりする場合、プロンプトの必須要素と考えられます。 指示/質問の説明の仕方は、生成AIがどのように回答を生成するかを誘導するうえで重要になります。 例えば、生成AIに「じゅんさいは、美味しい」と「じゅんさいなおひとやな」という文を、評価を含む文かそうでない文かに分類させるとき、プロンプトに「まず、『じゅんさい』が表す意味について分析し」という手順を含めるか否かによって、正しい答えを導けるかどうかが変わってきます。 指示や質問の仕方を工夫して、生成AIが目的に沿った回答を生成できるように、導いてあげましょう。 なぜ指示や質問の仕方で生成AIの回答が変わってしまうのか。不思議な気もしますが、人同士でも同様のことが起きます。 例えば、いきなり数学の問題を出されて、答えを出しなさいと指示を受けた場合、答えられないこともあるかもしれません。しかし、「この問題は、こういう手順で考えたら解けるよ」と教えてもらってから問題を解くのであれば、いきなりでは解けなかった問題が、今度は答えを導けたりします。 また、焦っていて解けなかった問題でも、「ちょっと落ち着いてからもう一度ゆっくり考えてみなさい」と言われて、一つひとつ手順をゆっくり確認したら、正解できるような場合もあるでしょう。 このように、指示や質問をどう説明するのかは、生成AIがアウトプットをするうえで、そのプロセスを左右し、結果的に、回答結果をも左右する重要な役割を持ちます。 指示/質問の説明をどう生成AIに伝えるのか、言語学的知見を使って、詳しく見てみましょう。