第2次トランプ政権発足へ…韓国は来たるべき経済・安全保障の衝撃を大きなチャンスにせよ【11月7日付社説】
トランプ氏の外交政策は米国による安全保障に対し各国に金を出させることがそのポイントだ。トランプ氏による同盟国評価の基準は価値ではなく金だが、その要求する額はあまりに法外だ。トランプ氏は口癖のように韓国を「マネーマシン」と呼び「100億ドル(約1兆5000億円)は出すべきだ」と要求してきた。防衛費分担金を現在の9倍出せということだ。トランプ氏を除く米国政府関係者はほぼ全員が「韓国が負担している在韓米軍駐留経費の額は合理的」と語るが、トランプ氏にはこれが通用しない。就任すれば直ちにこの問題から持ち出してくるはずだ。 トランプ氏の満足できる回答を韓国が提示できない場合、トランプ氏は在韓米軍の規模縮小をちらつかせてくる可能性が高い。第1次政権当時も実際にトランプ氏は「在韓米軍撤収」に触れたため、スタッフらが「第2次政権での優先課題」とすることで何とか納得させた。つまり韓国としては在韓米軍撤収要求にどう対応するかが今後の大きな課題として突き付けられた。韓米日による経済・安全保障協力強化を定めたバイデン政権とのキャンプ・デービッド宣言が紙くずとなる恐れもある。 トランプ氏は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記との親密な関係を誇示し「核兵器を持つ指導者と良好な関係を築くことは良いことだ」と発言した。そのためトランプ氏が再び大統領に就任した後の近い将来、金正恩総書記との会談が再び実現する可能性も出てくるだろう。金正恩総書記は今ロシアへの北朝鮮軍派兵の見返りに大陸間弾道ミサイル(ICBM)、軍事衛星、原子力潜水艦など先端軍事技術をロシアから受け取ろうとしている。そのためトランプ氏が今後金正恩総書記といかなる妥協点を見いだすかは韓国としても神経質にならざるを得ない。 トランプ氏は「米中首脳会談ショー」を通じ「米本土を狙う北朝鮮のICBM廃棄と核開発凍結で米国は安全になった」と主張した。つまり韓国国民の安全にはさほど関心はないのだ。金正恩総書記はこの点を突いてトランプ氏とひそかに駆け引きを行うだろう。そうなると韓国は名前だけの米国の核の傘で北朝鮮と対峙(たいじ)しなければならないが、一方でギブ・アンド・テイク方式のこのトランプ外交を逆手に取る発想も必要になってくる。トランプ氏が在韓米軍撤収をちらつかせ非常識な防衛費分担金を要求してくれば、反対に韓国は独自の核武装などを訴えられるはずだ。 トランプ氏が来年1月にホワイトハウスに入れば、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は今後2年以上にわたりトランプ氏と歩調を合わせねばならない。個性が強く称賛されることを好むトランプ氏のような政治家とは個人的な関係が重要になってくる。日本の安倍晋三元首相はトランプ氏が前回大統領に当選した直後から金で装飾されたゴルフセットをプレゼントし、機会があるたびにトランプ氏を大きくもてなした。尹大統領がトランプ氏とそのような関係を築くことができれば、金正恩総書記との危険な取り引きや在韓米軍撤収、韓国に対する貿易制裁や不利益などを阻止できるだろう。今後韓国はトランプ政権の経済・安全保障政策全般をしっかりと把握し、懸案ごとに事前に対策を立てていかねばならない。それができれば第2次トランプ政権発足に伴う危機を大きなチャンスにできるはずだ。