山口まゆ×松林麗監督インタビュー グレーゾーンのところで生きている人の存在もしっかり描いた『ブルーイマジン』
どんな人にこの映画を届けたいか
――特にどんな人にこの映画を届けたいですか。 松林:この作品のテーマとしては、もちろん【傷ついた人】【性暴力サバイバー(性暴力の被害から生き抜いた人)】の人たちに届いて欲しいです。だけど全ての方に届いて欲しいと思っています。 山口:今、色々と問題がありますけれども、発言をちゃんと聞いてもらえる世の中にだんだんとなって来ていると思っています。「嫌なことはちゃんと【嫌だ】と言ってもいい」ということを伝えたいです。自分の気持ちが本当に正しいのか?と悩んでいる人に「正しい」と伝えることが出来たら嬉しいです。 松林:今は皆が声を上げているということもそうですが、皆の意識が変わって来ていると思います。 ――「黙っていることが美徳」ということが間違っているということに、目上の人達も最近、気づき出した気がします。映画『ブルーイマジン』は今の時代にマッチした作品だと思います。 松林:ありがたいことに、時代が追い付いて来た感じがします。今回、監督の立場になって見えてくるものも多くありました。今回のテーマは【#MeToo運動】、フェミニズム、シスターフッドですが、もう少し弾けた作品も撮りたいと思っています。これをきっかけにまた監督に挑戦したいですね。 ――私は松林監督の話やプロデューサーを務めた前作『蒲田前奏曲』(2020) 、そして今作を見て、「松林監督はまずは女性たちを救おうとしている」のではと思いました。 松林:女性に限定しているわけではなく、私は人間が好きなんです。ひとり、ひとりの人間性をもう少し極めていきたいです‥‥。でも、やっぱり女性を救っていきたいですね。 実は『蒲田前奏曲』のインタビューで交流をするようになった松林うららさんから2022年に本作の出演依頼を受けました。その役を演じるにあたって、果たして私が適役なのか悩み、脚本も読ませてもらい、じっくりと話し合って松林さんの熱意と共に映画に参加することにしました。今、映画界は性暴力事件が露見され始め、自分自身の認識の甘さに強く反省していたり、身近な人が加害や被害者になっている状況を目の当たりにし、自分の対応も間違っていたのでは、とここ数年で考え方がガラリと変わりました。あってはならないことがある社会ではいけない、本来なら映画の中の彼女達が声をあげる前に、気づいた周囲の人間が声を強くあげる。そうしていけなければいけないのです。風通しの良い社会とは、耳を傾け合え、互いを人として尊敬し合う関係の構築なんだと今の私は思います。
取材・文 / 伊藤さとり(映画パーソナリティ)