[能登半島地震]「できれば1年前に戻りたい」能登から離れた新潟市でも大きな被害 “全壊”の理容店の1年
能登半島地震の発生から1月1日で1年となった。新潟県内の住宅被害は2万4千棟超。中でも液状化で甚大な被害が出た新潟市西区寺尾地区では、傾いた家や塀、波打つ道路が今もなお至る所で見られる。被災住民の多くは先行きに不安を抱えたままだが、住み慣れた愛着のある場所で暮らし続けたいと前を向く住民もいる。 【表】新潟市の被害状況 寺尾地区の県道沿いにある、真新しい駐車場と看板。理容室「床屋ふじ」は地震で被災した後も休業せず、店を開け続けている。「復旧と営業を並行して、今の形になったのは7月くらい。あっという間の1年だった」。店主の安藤哲史(さとし)さん(48)は振り返る。 あの日、午後4時10分。大きな揺れに襲われた。騒がしい声が聞こえ、外に出ると店の前の駐車場の地面が裂け、店も大きく沈んでいるのが分かった。角にある水道管の本管が割れたのか、道路から水が湧き上がり、近所の住民らが慌てふためいていた。 入り口側が87センチ沈んだ上、道路側から押されたため、駐車場との間は1メートルほどずれていた。土中の水道管も損傷。罹災(りさい)証明書の判定は全壊だった。 営業を続けるため、店内に三つ並んでいた理容椅子のうち比較的傾きが小さかった奥の一つを選び、配管と床を応急的に修理した。「建て直せば2千万円以上かかる。お金があればいくらでも直したいが、そんな余裕はない。最低限の修繕で店を続けることにした」 休業はしなかったものの、復旧工事を並行した影響で収入は地震前から半減した。 「できれば、あの日の午後4時9分に戻りたい」。それが本音だが、「店を続けて」と声をかけ、通ってくれる常連客がいる。生まれ育ったこの地域に思い入れもある。後ろは振り向かず、「ここで頑張っていく」と決意している。 新たな1年の営業も、5日から始まる。
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