トヨタが「空飛ぶタクシー」の米ジョビー・アビエーションに730億円を追加出資
トヨタ自動車は10月2日、「空飛ぶタクシー」と呼ばれる電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する米新興企業ジョビー・アビエーションに5億ドル(約730億円)を追加出資すると発表した。ジョビーは、早ければ来年にも商用サービスの立ち上げを計画している。 ジョビーの最大の外部株主であるトヨタによる今回の投資は、2020年に行なった3億9400万ドルの資本注入に上乗せされると、両社は2日の共同声明で述べた。新たな資金は2回に分けて提供される予定で、最初のトランシェは年内に、2回目は2025年に行われる見通しという。この投資は規制当局の承認を条件に、普通株式への現金出資のかたちで行われる。 ジョビーは、新たな資金を電動エアタクシーの認証と商業生産に用いると声明で述べている。ニューヨーク証券取引所に上場する同社は、2025年後半にドバイで商業サービスの立ち上げを計画中で、ドバイ国際空港からヤシの木の形をした人工島「パーム・ジュメイラ」への旅客運航を計画している。米連邦航空局(FAA)の承認待ちの段階にある同社の機体は、パイロット1名と乗客4名を最高時速200マイル(約321キロ)で輸送することができる。この機体は、試験飛行で1回の充電で150マイル(約241km)以上の飛行に成功した。 「私たちは、今回の追加投資にあたってジョビーが機体の認証を取得し、商業生産に移行するプロセスにあることを嬉しく思います。当社は、サステナブルな空の輸送が今日のモビリティの課題を解決するための強力な武器になるというジョビーのビジョンを共有しています」とトヨタモーターノースアメリカ株式会社の社長兼CEO、小川哲男は声明で述べている。 トヨタは、2020年にジョビーが5億9000万ドルを調達したシリーズCラウンドを主導していた。このラウンドにはインテルキャピタルやベイリー・ギフォードなどの投資家も参加した。ジョビーは、以前に韓国のSKテレコムやウーバーテクノロジーズなどからも出資を受けている。創業15年の同社は、2021年に同社の評価額を66億ドルとした特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場した。 ■空飛ぶタクシー市場は1兆ドル規模に 販売台数で世界トップの自動車メーカーであるトヨタは近年、未来的な交通テクノロジーへの投資を進め、それらを将来的に電気自動車(EV)やハイブリッド車を含む自社の製品ラインナップに組み込もうとしている。同社のシリコンバレーのベンチャーキャピタル部門「トヨタベンチャーズ」は、米国の自動運転シャトルバスのMay Mobility(メイモビリティ)や、全固体電池の製造企業であるIon Storage Systems(アイオン・ストレージシステム)などに投資している。 モルガン・スタンレーは、電動の空飛ぶタクシー市場の規模が2040年までに1兆ドルを超える可能性があると予測している。この分野に投資を行う他の大手としては、韓国の財閥のハンファ(米国のエアタクシー開発企業Overairを支援)や、中国のテック大手テンセント(ドイツのLiliumに出資)などがある。
Zinnia Lee