新潟の渡辺泰GKコーチ

＜アルビを支える人たち＞ 　アルビレックス新潟の選手、指導者、フロント、裏方さんなどを随時掲載する「アルビを支える人たち」の第2回は、今季からコーチングスタッフに加わった渡辺泰広アシスタントGKコーチ。ポジティブな声掛けをモットーに、ゴール隅を狙った正確な左足キックでGK陣の技術アップを手助けする。年齢は31歳と指導者としては若い方だが、国内6つのクラブを渡り歩いた経験を生かし、Jリーグ、そして世界を相手に戦う選手を育て上げる。【取材・構成＝小林忠】 　　　　◇　　　◇　　　◇ 　新米コーチの鋭いシュートに、GK陣が懸命に飛びつく。渡辺泰コーチは、就任5年目の石末龍治GKコーチ（59）とともに指導にあたる。練習では至近距離、1対1、クロス対応といったさまざまなシチュエーションに合わせてキックの球種を使い分ける。試合に向けた準備では対戦チームの第2GK以降の選手を分析。ピッチ内外で力を還元している。 　「石さん（石末GKコーチ）の考える練習メニュー、声掛けを参考に毎日を過ごしています。GKの技術アップの手助けが出来れば。1本1本を大切に。成功体験を積んで試合で力を発揮してもらいたいです」 　GK陣は日本代表経験者の小島亨介（27）、アカデミー出身の阿部航斗（26）、J2レノファ山口から今季加入の吉満大介（31）、プロ3年目の西村遥己（21）、来季トップチームに昇格する2種登録の内山翔太（17）の5人。それぞれ違うカラーを持ち味に向上心を持って練習に臨み、今季公式戦では小島、阿部、吉満が好プレーを示す。 　「全員が試合に向けた準備をしているので、急きょ出番が来てもエラーなくプレーできている。ライバルを蹴落とすというより、互いを尊重して高め合っている。手を抜くといった雰囲気は一切ない。それがピッチで表現されていると思います」 　GKが攻撃に加わりながら前進していく新潟のサッカー。練習前には必ず4対2のロンド（狭いエリアでのパス回し）が行われる。ボールを意のままに操り、狙ったところにパスを通す技術はフィールドプレーヤーだけでなくGKにも求められる。 　「6つのクラブでプレーしたが（ロンドを）ここまでみっちりやるのは新潟だけですね。全てが詰まっています。みんなうまい」。 　好きだった野球が小5からしか入団できず、小4でサッカーを開始。数少ない左利きだが迷わずGKを選んだ。中学で新潟のアカデミーに進み、高2の09年にはU－17日本代表としてU－17W杯のメンバー入り。1次リーグのメキシコ代表戦に出場した。11年に新潟のトップチームに昇格。だが、ケガの影響などで出場機会を得られず、期限付き移籍で徳島ヴォルティスやJAPANサッカーカレッジなどを渡り歩き、22年にJFLのヴェルスパ大分で引退した。 　「現役時代は約10人のGKコーチに出会えた。若い頃は厳しい言葉をぶつけられてメンタルが折れそうになったこともあるが、今はその全てが原動力になっている。大分で会社員と選手を兼務した経験も指導に役立てられれば。いい形で選手に還元したいです」。 　昨季はアカデミーのU－15でGKコーチを務め、今季トップチームに昇格。始動前のミーティングでは石末GKコーチからポジティブな言葉掛けで選手を伸ばそうと話しがあった。 　「本当にそうだと思うし、すごく印象に残っている。そのスタンスで指導者人生を歩みたい。カテゴリーによって言葉のチョイスは変えないが、育成年代は技術的な指導がメインで、トップの選手には技術的なことより判断の部分などを話し合ったりする。毎日が勉強です」 　現在はトップチームで活動しながら指導の幅を広げることと、ライセンス取得を視野に時間を見つけてアカデミーの練習に出向き、フィールドプレーヤーの指導にも当たる。 　「プレーヤーとして活躍できなかったので、いい選手を輩出したい。新潟のGKって誰が出てもいいよね、と言われるように。全ポジションに日本を代表する選手が出てきたら最高ですね」 　◆渡辺泰広（わたなべ・やすひろ）1992年（平4）10月4日生まれ、新潟市出身。鳥屋野ファイターズ（鳥屋野小）－アルビレックス新潟ジュニアユース（上山中）－同ユース（開志学園）。11年に新潟でプロキャリアを開始し、徳島ヴォルティス、JAPANサッカーカレッジ、VONDS市原、ブラウブリッツ秋田、ヴェルスパ大分に所属。U－15、16、17、18日本代表。 　○…チームは29日、アウェーで北海道コンサドーレ札幌と対戦する。28日は試合会場の札幌ドームで前日練習を行った。4月の前回対戦は1－1のドロー。前半に先制されるも、後半にMF秋山裕紀（23）のゴールで追いついた。相手は6連敗中で最下位に沈むが、アグレッシブな攻撃には注意が必要だ。新潟は6月、首位FC町田ゼルビア（3－1）、2位鹿島アントラーズ（1－1）、5位サンフレッチェ広島（1－1）と上位3チームから勝ち点5を獲得するも、順位は16位と低迷。敵地での前節26日広島戦から中2日と厳しい日程だが、勝利をつかみ7月につなげたい。