夜に正礼装の『モーニング』を着るのは日本だけ!? 落語家・笑福亭松喬が違和感を提言
ドラァグクイーンのサマンサ・アナンサとインスタグラマーのウラリエが、金曜日にパーソナリティーを務める番組『Clip』(ラジオ関西、月-金午後1時~)。 【関連】落語家・露の新治「落語は喜んでもうてなんぼ」 落語界の現状と課題 最近はオンライン稽古も 落語家の笑福亭松喬(しょうふくていしょきょう)さんをゲストに迎え、落語にまつわるさまざまな話を聞いた。 落語との出会いについて、「中学生時代にラジオで笑福亭仁鶴(しょうふくていにかく)師匠の落語を聞いたのが最初」であることを明かした松喬さん。頭の中に情景が広がり、「これはすごい世界だ」と感じたその瞬間から、勉強はほったらかしになったといいます。 落語を演じる側にまわると、目上の人からさまざまなことを教わるという。 ある演目に、長屋で貧乏暮らしをする登場人物が、正礼装の「モーニング」を持っていないのに持っていると言い張るシーンがある。「ほな、なんで友だちの結婚式にモーニングを着てなかったんや」と尋ねられると、「晩にはモーニングを着られへんと思って」と返すくだりがあるのだが、松喬さんによると、「この流れでみんな笑ってくれるけど、まったくのウソではなく、基本的に午前中に着るから『モーニング』(と呼ばれている)」のだという。 夜に着用する正礼装としては「イブニングコート」と呼ばれる燕尾服があるが、日本ではモーニングが流行したために、本来着用するはずの朝や日中だけでなく夜にも着られるようになったのだそう。 この現状を踏まえたうえで、「組閣の日の夜、国会議員さんが階段の前でモーニングを着てるけど、外国から見たら『なんで夜にモーニングやねん』と思われている。これは日本独特の文化です」と付け加えた。 落語を続けていると、意外と知られていない知恵を教わることも多いので「おもしろい」と語る、松喬さん。 続けてこぼした、「まあ、モーニングサービスを夕方5時くらいまでやってる喫茶店もあるけどね」というひと言には、サマンサとウラリエも思わず笑っていた。 松喬さんが演じる「花色木綿」という盗人が登場する演目を見たサマンサは、「臨場感がすごくてびっくりした」と興奮気味にコメント。 演目中、空き巣が家に入るも、なにも物がないため「ここ空き家か? けど、畳あるし建具でついたてあるわな」とつぶやくシーンがある。 このシーンについては、「引っ越しをする際、東京では畳や障子などの建具は大家さんが入れてくれる。でも、大阪は自分の持ち込み。『やからこういうひと言があるんやで』と弟子に指導する」と解説した。 さらに、「盗人が荷物をあさるときも、長持(ながもち)から開ける。長持はタンスやから、金目のものが入っていることが多い。一方の柳行李(やなぎごうり)には衣服しか入れないから、盗人がそっちから開けることはおかしいと指導する」と説明すると、サマンサは「落語を通して時代的背景を学べる」と感激していた。 (取材・文=バンク北川 / 放送作家) ※ラジオ関西『Clip金曜日』2024年11月1日放送回より
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