レ軍の攻略法から浮かぶイチローの問題点
翌8日の先発右腕ポーセロは、第1打席6球全て直球勝負で見逃し三振。ポテンヒットを許した第2打席も3球とも直球だった。九回に中飛に打ち取った上原も「捕手のサインに従って高めに投げました」と、直球2球で勝負している。この日は2番手ロスの初球カーブ(結果は投ゴロ)を除いて全13球中12球が直球。レ軍が徹底した直球攻めで攻略を試みたのは、明らかだった。 レッドソックスが直球で攻め込んだ理由を推測するに、最近のデータを洗う中、直球に押し込まれ、その対応に苦しむイチローのウイークポイントをついたのだろう。確かに2日間の内容を見る限り、直球への対応とボールの見極めにズレを感じ、持ち前の積極性が影を潜めているかにみえる。 イチロー自身は、過去に自らのバッティングの基本について、「目でとらえ、体でとらえ、最後にバットでとらえる」と語っていたが、直球に押し込まれる理由はバットのスイングスピードの遅れと、振り出しのポイントの遅れ、ミートポイントのズレの三つだ。それらを修正する能力の高さが、イチローのイチローである所以だったはずなのだが、その修正作業に16試合も要するのは、やはり何かがおかしいのだろう。 しかし、過去のスランプも苦しさを教訓に克服してきた。10年連続200本安打達成が潰え、常連だった球宴にも漏れた2011年も、年齢による限界説が囁かれた。 「苦しい時にこそ自分とむきあってきた」からこそ、苦境を新境地に変えてきた。2013年に日米通算4000安打を放った際「白髪が増えたことと紅白歌合戦で演歌がいいと思うようになったこと以外、年齢を感じることは全くない」と言い切った。多くの高年齢選手が故障をきっかけに復帰に要する時間が長くなり、出場機会を失い引退に至る例が少なくない。だが、イチローは、入念な準備とケアを怠らず故障とは無縁だ。 ジェニングス監督は「ボートの漕ぎ始めを想像してほしい。最初の3、4かきはオールが水の抵抗を受けるから進みにくい。だが、一旦、沖に出るとスイスイいくものだ」とも語っていたが、レッドソックス戦、レッズ戦で続いたヒットが、再浮上へのきっかけとなるのか。過去に何度も苦境を肥やしに這い上がってきたことを、イチロー自身が今、誰より信じていることだろう。