「私が北海道の子供なら怒ります」日本陸連・有森裕子副会長が登録料735 万未納の北海道陸協に喝!
選手はお客様ではない
11月上旬、衝撃的なニュースが流れた。日本陸連とともに競技団体の中核をなす日本水泳連盟が資金不足から、女子水球代表を来年2月にドーハで行われる世界選手権に派遣できず、パリ五輪出場の道が絶たれたという。 「いや、びっくりしました」という有森副会長は、自らがプロアスリートとして活動した経験を踏まえて、こう続ける。 「でも、選手はお客様じゃないんです。自分たちに何ができるのか、どうしたらいいのか考えてほしい。例えば、陸上選手ならランニング教室を開いて走ることの魅力を伝えていくとか、有名なアスリートは自らの存在をアピールするためにもっと出ていくとか。JOC(日本オリンピック委員会)のアスリート委員会でさまざまなことについて提言してほしい」 有森氏個人の持論は「アスリートファースト」ではなく「社会ファースト」。スポーツは社会のなかで、平和に健康に暮らしていく手段に過ぎず、傲慢になってはならないと繰り返し強調してきた。財政状況悪化というシビアな状況だからこそ、選手は自らの存在を問い直すときかもしれない。 先輩後輩の縦社会、体育会体質を払拭できない日本のスポーツ界のなかで、背筋をピンと伸ばして自分の意見を堂々と発言するスタイルを貫いてきた。今夏の世界陸連理事選に立候補すると多くの支持を集めてトップ当選し、2年後の世界陸上東京大会を成功させる重責を担う。 「日本陸連が全部コントロールするのではなく、各地方陸協や陸上競技に携わる人がみんなでやろうよ、という思いを生み出して、それを形にできればいいですね。そして、道陸協の問題ですが、事の重大さを考えると、安易に周りの組織が助けてはくれないという気持ちを持ってもらいたい。決して、今回の件を軽んじてほしくない」 中央と地方の連携を重要視するからこそ、登録料未納問題を注視している。存続の危機に瀕する道陸協は有森副会長の思いをどれほど理解しているのだろうか。 取材・文:津田俊樹 産経新聞運動部記者としてプロ野球西武、巨人を担当、’92 年アルベールビル冬季、同年バルセロナ夏季五輪を取材、現在はフリーランス。著書に「ブレないスポーツ報道(言視舎)」、「関学・京大・立命『アメフト三国志』(産経新聞出版)」の監修に携わる。
FRIDAYデジタル