過熱V争い 大の里3敗目、横綱へ〝勝負のラスト5日間〟/九州場所
大相撲九州場所10日目(19日、福岡国際センター)新大関大の里(24)は関脇大栄翔(31)に寄り切られて3敗目。新大関優勝へ向けて大きく後退した。大栄翔は6勝目。他の2大関は琴桜(27)が翔猿(32)を引き落とし、豊昇龍(25)は琴勝峰(25)を寄り切って、ともに1敗を守った。平幕隆の勝(30)は9勝目、阿炎(30)は勝ち越した。1敗の2大関と隆の勝を、阿炎と優勝経験がある再入幕の尊富士(25)が1差で追う。 一歩どころではない。賜杯を争う終盤の舞台を迎える前に、新大関大の里に土がついた。3敗目。突き押し相撲が得意の関脇大栄翔にもろ差しを許し、寄り切られるよもやの黒星で、二歩も三歩も後退だ。 「もう一回集中して、5日間やるだけ。またあしたから」 立ち合いでは強烈な圧力をかけた。左をはずにかけ一気に走って土俵際まで運んだが、ここで押し切れない。相手の左肩越しに上手を取ったことで、逆に左を深く差されて、もろ差しに。自ら上手を放して打開しようとしたが、万事休す。詰めの甘さに泣いた。 びっくりした 土俵下で見守った高田川審判長(元関脇安芸乃島)は「(最後まで)気にせず前へ出ればよかったのに。大の里が二本差されるかたちは見たことがない。大栄翔もびっくりしたような顔をしていたよ」。 新大関の優勝は平成18年夏場所の白鵬が最後で、昭和以降わずか6人。10日目までに3敗を喫して賜杯を抱いた例はない。清国が昭和44年名古屋場所で唯一12勝で制しているが、剣が峰に立たされたといえる。 来年4月には大の里の出身地、石川・津幡町で春巡業が開催される。5日にチケットが発売され、販売初日には販売所となった津幡町文化会館には早朝5時から行列ができ、約140人が並んだ。同販売所で扱った1階正面いす席はまたたく間に完売したそうだ。 横綱審議委員会による横綱昇進の内規は「大関で2場所連続優勝もしくはそれに準ずる成績」。津幡場所実行委員会の関係者は「地元では来春には大の里が横綱になって帰ってくると信じている」と明かした。 一年納めの場所。大の里は「(終盤)5日間が大事になってくる」。まだ火は消さない。(奥村展也)