【何観る週末シネマ】同じ境遇のふたりが、分岐した自分と対決!!『スマホを落としただけなのに ~最終章~』
この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』。気になった方はぜひ劇場へ。 【写真】『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』場面写真 〇ストーリー 長い黒髪の女性ばかりを狙った、連続殺人事件。被害者は落としたスマホから個人情報を奪われ、家族や恋人だけでなく、最後は命まで奪われてしまう。ただ、スマホを落としただけなのに...。人の心を操る天才的ブラックハッカーでもある連続殺人鬼の浦野(成田凌)は、事件を追っていた刑事の加賀谷(千葉雄大)に一度は捕まったものの、刑務所内からサイバー攻撃を計画して、警察内の混乱に乗じて姿を消してしまった。浦野は、一体どこに――?平穏な日々が続く中、突如として日本政府に、大規模なサイバーテロ攻撃が再び仕掛けられる。発信元は、韓国・ソウル。これは浦野の仕業なのか?浦野を監視するエージェント・スミン(クォン・ウンビ)の正体は??今、日本と韓国を舞台にした、スマホを持つ者全てがターゲットの、<ファイナル ハッキング ゲーム>がいま始まる――。 〇おすすめポイント 『スマホを落としただけなのに』(2018)、『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(2020)と続いてきたシリーズも今回で”とりあえず”完結となる『スマホを落としただけなのに ~最終章~ ファイナル ハッキング ゲーム』が現在公開中!! ちなみに韓国リメイクもされており、今作の舞台は韓国となっているが、リメイク版との繋がりは無い。 今作を語るうえで、どうしても1作目の結末に触れなくてはならないため、その点のネタバレに関してはご了承ください。 このシリーズは、1作目で北川景子演じる稲葉が、スマホをハッキングされたことから、事件に巻き込まれていくサスペンス。どの世代でも個人情報満載のスマホを当たり前のように持ち歩く時代となったことで、ちょっとしたことから事件に巻き込まれてしまう危険性と恐怖を描くことがベースとなっているが、そのなかで、もうひとつのテーマが存在しており、それは原作には無い、映画版ならではのテーマとなっている。 それは家庭環境が、いかに人格に影響を及ぼすのか。そして虐待をうけて育った者の心の浄化である。 1作目では、母親から虐待をうけて育ったため、母の愛を知らず、母に似た髪の長い女性を標的としたサイコパスとして登場したのが浦野(成田凌)であった。その一方で、事件を担当した刑事の加賀(千葉雄大)も実は、幼少期に母親から虐待をうけており、浦野と同じトラウマを抱えていた。 つまり加賀と浦野は、同じ境遇のふたりが、ある時点から分岐した自分のような存在と対決するような構図となっている。ある意味、最大の理解者、明と暗のようなふたりの対決がついに完結するということだ。 加賀の”心の浄化”に関しては、2作目の『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』で描かれていたが、今作は浦野メインとなっている。 殺人にためらいが無く、まだ稲葉への異常な執着もあり、相変わらずサイコパス全開な浦野ではあるし、成田凌の表情は、見事なほどに不気味ではあるが、そのなかでも心が揺らぐポイントがいくつか用意されている。 浦野が犯罪を重ね、高い場所に置いてきてしまった人間性を取り戻すことができるのか、そして加賀との因縁にどう決着をつけるのかを描いた人間ドラマとして、3作構成を存分に活かした結果、その見応えは十分だ。 そして『リング』(2018)の中田秀夫監督が手掛けているだけのことはあり、決してホラー要素も忘れてはいない。 (C)2024「スマホを落としただけなのに最終章」製作委員会 〇作品情報 監 督:中田秀夫 脚 本:大石哲也 出演者:成田 凌、クォン・ウンビ、大谷亮平、白石麻衣、井浦新、佐野史郎 真飛聖、利重剛、猪塚健太、髙石あかり、田中圭(特別出演)、原田泰造(特別出演)、千葉雄大ほか 原 作:志駕晃「スマホを落としただけなのに 戦慄するメガロポリス」(宝島社文庫) 配給: 東宝 11月1日(金)公開
バフィー吉川