なぜ今「大麻使用罪」導入?増える若者の乱用も日本の生涯経験率は1.4% 罰則追加の意味と時代のトレンドは
12月12日から「大麻使用罪」が設けられた。大麻はこれまで、所持や譲渡が処罰対象で、使用に罰則はなかったが、今後は懲役刑が科される。その狙いは若者の乱用防止だ。警視庁によると、2023年に大麻で検挙や報道された少年は144人と、10年前と比べて10倍に増加した。 【映像】有害性ランキング アルコール>たばこ>大麻 使用罪の施行を受けて、Xでは「世界の流れに逆行している」「タバコやアルコールの方がダメ」といった意見もある。確かに大麻は、タバコやアルコールに比べて、健康被害や依存度が低いというデータもあり、ヨーロッパや南米を中心に、多くの国が医療用大麻を合法化している。 娯楽目的の使用は、アメリカの一部の州や、カナダなどに続き、4月からドイツでも合法化された。一方で、医療用大麻の解禁後、2年前に栽培と一般使用が合法化されたタイでは、今年に入って、再び規制強化する動きがある。『ABEMA Prime』では、日本で新たに施行された「大麻使用罪」の意味や、時代に合ったトレンドについて考えた。
■「大麻使用罪」が施行 国内では若者の摘発人数増加
12月12日から改正大麻取締法が施行され、使用罪の新設や、医療用の解禁が盛り込まれた。改正後は使用罪が懲役7年以下となり、これまで懲役5年以下だった所持等は懲役7年以下に。医療目的では、大麻草から作られた医薬品が使用可能になった。 厚労省の「薬物事犯検挙人員の推移」によると、大麻事件による摘発人数は、2014年時点では2000人以下だったが、2023年には6000人台中盤となっている。また、そのうち20代以下の割合は、2014年の40%程度から、2023年は72.9%に増加した。 筑波大学教授で心理学者の原田隆之氏によると、国連の条約が変わったことが、きっかけにあるという。「『大麻は害でしかなく、医療目的に使えない』とされていたが、最近の研究でそうではないとわかり、医療目的で使えるように条約が変わった」。そのため条約締結国は国内法を変える必要があり、日本では大麻取締法を改正した。「医療用に使えるようになっただけだが、『大麻解禁』とのうわさが広まり、使用罪が加わった」。 医療用の解禁で、どのようなメリットがあるのか。「大麻そのものではなく、成分の入った薬で救われる人がいるが、『乱用が広がる』と言われると困るため、使用罪が加わった。覚醒剤やアヘンには使用罪がある」。 これまで使用罪がなかった理由については、「あまり有効成分は含まれていないが、力士のまわしや、神社のしめ縄、天皇陛下が即位された時に献上する麻布などに、大麻は使われている。農家が栽培時に、知らず知らずのうちに吸い込むと使用罪になってしまうため、これまで大麻にはなかった」。 これらの前提のもと、「ちまたやネットの情報と、科学的な情報を切り分けて考えるべきだ。大麻には害があり、依存性もあるため禁止されている。合法化されているのは、条約締結国のうち、数えるほどしかなく、世界の潮流ではない」と解説する。 「タイ夜遊び歴20年」というライターのカワノアユミさんが、タイからのリモート出演で現地の状況を語る。「大麻が2年前に解禁されてから、旅行者も増えたイメージがある。周りの日本人や旅行者も、タイで使用する人が多い」。 それによる治安の変化を聞かれると、「タイでは公共の場での喫煙が禁止されているため、そこまで治安の悪さは感じたことがない。ただ、大麻を禁じられているクラブでは、入口で没収することで、ケンカが起きると聞いたことがある」と答えた。 タイでは2023年10月、バンコクのショッピングモールで14歳の少年の発砲により、2人が死亡する事件が起きた。「少年の薬物使用は不明だが、その2、3日後に、タイ政府が娯楽目的での大麻使用をめぐる新たな法案の可決に動いていると発表され、新しい法律ができようとしている」。