住宅の「耐震補強」阪神大震災も能登地震も生存に直結 対策遅れる地方、都市との格差拡大 備えあれ②耐震力
■家屋密集、高まる火災リスク
住宅にとって地震への備えで重要なことは、耐震性の強化だけではない。木造家屋が密集する市街地などでは、もう一つの脅威も考慮する必要がある。それが火災だ。
1年前の能登半島地震では、石川県輪島市の「朝市通り」一帯で大規模火災が起きた。総務省消防庁などによると、240棟約4万9千平方メートルが焼失し、10人以上が犠牲となった。電気配線が地震で傷つき、出火した可能性があるという。
「被災地には独特のにおいがある。能登も同じにおいがしたと思う」。阪神大震災当時、神戸大の学生だった藤江徹(いたる)は、輪島の大規模火災の映像を見て、つらい記憶がよみがえった。
30年前の地震直後、神戸市灘区の下宿先から友人のアパートへ駆けつけた。友人は無事だったが、同じ大学の男子学生が建物の下敷きになって助けを求めていた。
「俺、助かるかな」
学生の力ない声に、藤江は「絶対、助けたる」と声をかけたが、目前に火の手が迫る。断水で消火する方法もない。「逃げろ」との呼び声に離れた直後、炎がアパートを包み込んだ-。
古い家屋が並ぶ地域は倒壊に加え、火災拡大のリスクも高い。国は平成24年、古い木造家屋がひしめき、地震で被害拡大が懸念される「著しく危険な密集市街地」が17都府県に計5745ヘクタールあると公表した。解消を進めるが、現在も10都府県に計1662ヘクタールが残る。
■まずはハード対策進めるべきだ
大阪公立大教授(居住安全工学)の生田英輔(48)は、地震に伴う火災が密集市街地で起きた場合、「同時多発的に火災が起き、地域の消防力を上回り激甚化しやすい。まずは耐震化や不燃化などハード対策を進めるべきだ」と強調する。
ただ、高齢住民が多い地方などでは、年齢や資金的な面から耐震化を諦めるケースが多い。輪島市によると、朝市通り周辺も耐震改修の補助制度などを利用する人は少なかった。生田は、もし耐震改修などが進まない場合、「感震ブレーカーを設置するなど、火災自体が発生しにくくする工夫が有効」とも指摘する。