【独占告白】サッカー日本代表監督・森保一「2度目だからこそ活かせる経験と、だからこその恐さ」
「2年前は息子たちも取り上げていただいて。今回は親父もフライデーデビューということで、ありがとうございます」 【独占インタビュー】森保一監督 色紙に決意をしたためてもらうと… サッカー日本代表・森保一監督(56)が、FRIDAYの単独インタビューに初めて応じた。取材の冒頭、FRIDAYが’22年に長男・翔平さんと次男・圭悟さんのユーチューブ活動を取材した件について語った指揮官は、続けてこう弁明した。 「昔はフライデーを読んでましたけど、最近は……。これは言いわけですけどやることがいっぱいで」 取材日は関東に台風が迫る荒天だったが、指揮官が纏う空気は穏やかだった。 9月5日、日本代表は『2026 FIFAW杯アジア最終予選』初戦の中国戦を、ホームの埼玉スタジアムで迎える。最終予選は全10試合、6ヵ国中の2位以上でW杯出場が決定。3、4位ならプレーオフに回る。スペイン1部で躍動する久保建英(23)やイングランド1部で活躍する三笘薫(27)、遠藤航(31)ら錚々(そうそう)たる選手が揃い、史上最強の呼び声も高い。 ’22年カタールW杯でベスト16に食い込んだ森保監督はそのまま続投。日本代表監督史上初めて2大会連続でW杯予選を戦う。’26年の北中米大会こそは「悲願のW杯ベスト8」への期待がかかるが、そのためにもまずはこの最終予選だ。 「2度目の最終予選だからこそ、1回目の時にはわからなかったことが想像できたり、経験を活(い)かせるところはあると思います。同時に、わかっているからこその怖さもあるんです」 ◆前回の最終予選を振り返ると ’21年9月に始まったカタールW杯最終予選では出だしで躓(つまず)いた。初戦のオマーン戦に敗れ、1勝2敗で迎えた第4戦オーストラリア戦、試合前の君が代斉唱時に森保監督の目は真っ赤に充血し、涙が溢(あふ)れんばかりだった。それほどに、厳しい船出だった。当時を振り返って森保監督はこう言う。 「前回負けた言いわけにするつもりはないですけど、最終予選初戦のオマーンは1ヵ月前から代表メンバーを招集し、備えていました。さらに、日本代表選手が帰国する前から、彼らは来日してコンディションを調整していたんですよね」 苦戦を強(し)いられた要因はほかにもあった。8月末~9月初旬は欧州の移籍市場が閉じておらず、選手によっては所属先が完全に決まり切っていない場合もある。たとえばディフェンスラインのキーマンだった冨安健洋(25)は当時、イングランドの名門・アーセナルへの移籍を控えており、代表側はその動向に配慮した。森保監督はこう振り返る。 「本当に選手にとっても難しい時期で。3年前の最終予選の時、練習が終わったら移籍関連の電話をしている選手もいて、『とても試合に集中できる状況じゃないよな』と思ったのを覚えていますね。それに実際、冨安なんかは移籍のためメディカルチェックを受ける必要があるということで、あの時のオマーン戦には招集できなかったんですよね」 所属先が決まっていたところで、コンディション調整がスムーズにいくというわけではない。 「移籍を早く決めた選手たちも、戦術を叩き込まれたりするハードなプレシーズンを終えて、シーズンが始まったこの時期は疲労が出始めるタイミングですよね。前回の最終予選前の練習が、自分が代表監督をやっていてクオリティが低いなと初めて思った時でした」 ◆「メディアはあまり気にしない」 2度目の挑戦で問題点が見えるだけに、経験を活かせる自信はある。さらに、次回W杯にアジアから進出できるのは8.5ヵ国。前回の4.5枠のほぼ倍であり突破は確実視されている。W杯出場だけで喜べた時代では、もはやなくなったのだ。 突破して当然と思われているうえに、これまで積み上げた実績、結果の分だけ、当然ながら周囲からの期待もハードルも上がる。 「周囲の声は気にならないことはないんですけど、気にしないようにしていて。賛否両論は常にあると思っていますし、見る目が厳しいということは、それだけ注目度が高く、チームに対していろんな見方が増えているということでもあり、日本サッカーのためにもすごく良いことで嬉しく思っていますね」 前回の最終予選序盤しかり、今年1~2月のアジアカップしかり。期待を裏切れば、一転して激しい批判にさらされるご時世でもある。 「サッカーに携わる一人として、批評される側の人間として、それがイヤではないですし、レベルアップのヒントが隠されていることもあるので自然に受け止めています」 目標はただひとつ。 「W杯で優勝すること。勝って皆さんの喜びにつながればと思います」 足繁く視察に通う欧州で感じたことがあるという。 「スペインは大国としてプレーモデルがはっきりしているなと感じました。日本が彼らとの差を詰めるには積み重ねしかない。そこにフランスやイングランドのように個の突出した選手を発掘し、育てていく。選手たちのさらなる成長に期待しています」 長期体制ならではの完成度があり、タレントも揃(そろ)いつつある。進化を続ける森保ジャパンが、まずはアジアを制圧する。 『FRIDAY』2024年9月20日号より 取材・文:了戒美子(スポーツライター)
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