白髪は過剰に恐れなくてもいい時代に⁉ 進化を続ける「白髪ケア」研究の最前線
進化を続ける白髪ケア研究にグレイヘアの浸透など、今、白髪を取り巻く環境や価値観は大きく変わってきている。最新研究とリアルボイスから、自分らしさを表現するための白髪との向き合い方を見つけてみよう。『エル・ジャポン』12月号より。 【写真】白髪をアクセサリーにするセレブたち
★教えてくれたのは... 伊熊奈美さん/美容ジャーナリスト・毛髪診断士 20年以上にわたり女性誌の美容記事を中心に企画、執筆、監修する。特にヘアケアに精通し、『頭皮がしみる、かゆいは危険信号! いい白髪ケア、やばい白髪ケア』(小学館)など白髪に関する著書も刊行する。 伊藤 廉さん/㈱ミルボン 研究開発部博士(理学)・博士(工学) 大学、国の研究機関で遺伝子工学、タンパク質工学などさまざまな研究を経験した後、㈱ミルボンにて髪と頭皮の研究を行い、多くの実績を上げる。著書に『印象は髪がすべて 大人髪のトリセツ』(KADOKAWA)がある。
白髪は過剰に恐れなくてもいい時代に!
これまで多くの女性たちを悩ませてきた白髪。その価値観が大きく変化してきていると毛髪診断士の伊熊さんは言う。 「きっかけのひとつが2017年に出版された書籍『グレイヘアという選択』(主婦の友社)。2018年には『グレイヘア』が流行語大賞にノミネートされました。背景には、年齢を重ねて敏感になっていく頭皮に対し、刺激の強い白髪染めを頻繁に行い続けるのがしんどい、と感じる女性が多かったということがあります。その後、白髪ぼかしといった白髪染めのテクニックや、傷みを抑えながら色を入れられるヘアカラートリートメントなど、さまざまなケア方法が生まれました。さらに近年、各メーカー独自の研究で白髪への有効性や安全性のエビデンスを取得した、黒髪に戻す成分も出てきています」。白髪が敵ではなくなる時代はもうすぐそこかも!?
頭皮の赤みは危険信号! 正しいケアを身に付けて
「毛髪科学の世界では、白髪は遺伝的要因より後天的な要因のほうが大きいといわれています」。そう語るミルボン研究員の伊藤さんは、4000人以上の頭皮や毛髪状態を調べる大規模調査を行っている。その結果、多くの新事実が判明した。 「まずわかったのは、頭皮の赤みと薄毛・白髪の相関関係。頭皮が赤くて炎症を起こしている人ほど薄毛になりやすく、白髪の数が多いんです。炎症を起こす原因のひとつに、頭皮の常在菌バランスがあります。日本人の頭皮は3種の菌が約90%を占めて存在していますが、その中のコリネバクテリウムという菌が増えすぎると慢性炎症を引き起こすんです。いるだけで老化を促進するエンテロコッカスという菌も見つかっています」。 さらに、白髪を黒髪に戻せる可能性も見えてきた。「初期の白髪は、髪を黒くするメラニンは作られているものの、それが髪に届けられなくなっている状態。研究の結果、『葛根エキス』『カモミールエキス』『タイムエキス』などがメラニン輸送を活性化することもわかっています」