戦没者追悼式 記憶継承「遺族の使命」 安斎さん(福島市)追悼の辞 教訓、若い世代に
東京都千代田区の日本武道館で15日に行われた全国戦没者追悼式で全国の遺族を代表して追悼の辞を述べた県遺族会長の安斎満さん(86)=福島市=は、恒久平和の実現を訴えた。父与一さん=当時(29)=ら戦没者の犠牲の上に築かれた79年間の平和と繁栄に感謝しつつ、世界ではいまだ戦争が絶えない状況に「戦争の悲惨さと平和の大切さを今こそ語り継いでいかなければならない」と誓った。 遺族代表の追悼の辞の順番が来ると、満さんは確かな足取りで祭壇に向かい、天皇、皇后両陛下に一礼して標柱の前に進んだ。元気な体でこの場に立てるのは父と母のおかげだとの思いで、心の中で与一さんに「ありがとう」と伝えた。 与一さんは1943(昭和18)年11月、出征先の中国でマラリアを患い亡くなった。召集からわずか5カ月余りだった。福島駅をたつ与一さんの背中を5歳の満さんが追いかけていたと、母キチさん(故人)が後に話してくれた。「幼い子どもを置いて戦地に赴く気持ちは相当厳しいものだっただろう」。父親になった自分が当時の与一さんの気持ちを思うと、親子を引き裂く戦争のむごさに胸が張り裂けそうになる。
遺族会の会員は高齢化が進み、戦禍を生き抜いた人は一握りとなった。満さんは戦争の記憶が忘れ去られることに危機感を抱く。戦争の教訓を伝え続けることが平和を守ることにつながるとの信念で、若い世代に遺族会活動を引き継ごうと青年部の育成に力を入れている。追悼の辞では「記憶の薄れゆく今日にあって、教訓を伝えていく機会が失われつつある現在、語り部として子・孫へと継承していくことが大切であり、遺族の使命」と強調した。 世界に目を向けると、ロシアによるウクライナ侵攻など戦争で今も子どもを含めた多くの犠牲者が出続けている。「平和の大切さは、遺族が身に染みて知っている。一日も早く平和が実現することを祈るばかりだ」と参列した遺族の思いを背負いながら世界の安寧を切望した。 ■安斎さんの追悼の辞 全文 本日ここに、天皇、皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、各界代表をはじめ、全国各地から遺族代表が集い、全国戦没者追悼式が厳粛に執り行われるにあたり、戦没者の遺族を代表して、謹んで追悼の言葉を申し上げます。