朝ドラ『おむすび』で蘇るプリクラの思い出 同世代のライターが当時のリアルを語る
朝ドラ『おむすび』(NHK総合)を語る上で外せない地元ギャル集団「ハギャレン」こと「博多ギャル連合」。そして、その「ハギャレン」を語る上で外せないのが、プリクラだろう。 【写真】『おむすび』に登場するプリクラ 今回は、物語のヒロイン・米田結(橋本環奈)とほぼ同世代、平成初期生まれ、地方都市育ちのライターがゼロ年代を舞台にした物語の中で描かれる当時のプリクラについて解説する。 スマートフォンの誕生前、赤外線で連絡先を交換し合っていたあの頃。『おむすび』を観ていると、当時の記憶が思い起こされる。 思い返せば、ゼロ年代はギャルという文化が変貌を遂げてきた時期だった。 90年代後期、いわゆるコギャルブームの際には、ルーズソックスがブームとなり、日焼けした肌にメイクをするというギャルが多数。しかし、ゼロ年代に入りギャルは多様化した。黒ギャル(日焼けした肌のギャル)、日焼けはせずメイクも黒ギャルよりは控えめな白ギャル、レースの服を好み頭にティアラのようなヘアアクセサリをつけていることの多い姫ギャル、アメカジ風ファッションのギャルなどが誕生してきた。 ドラマの中に登場する「ハギャレン」のメンバーであれば、総代表・真島瑠梨(みりちゃむ)のような90年代のギャル文化を継承するギャルもいれば、金髪で日焼けをしているわけではない田中鈴音(岡本夏美)のようなギャルもいた。 さて、そんなギャル、というよりも当時の学生たちの生活と切っても切り離せないものがプリクラだった。 今でこそいわゆる“盛れる”写真アプリや画像加工アプリが登場しているが、それ以前はちょっとでも自分をよく見せる写真を撮影するには、プリクラの力が不可欠。ガラケーの写真と“盛れる”は縁遠いものだったから。 また、近年、学生たちにプリクラを見せてもらうと、画像にらくがきはしないのがイマドキ。何かの記念に撮るというシチュエーションが多いようだ。 ただ、物語の中にも登場する“漢字系”のプリクラが一世を風靡していたゼロ年代は、プリクラは制限時間ギリギリまで落書きをするのがデフォルト。第5話の最後で結と「ハギャレン」が撮影したプリクラのように、名前を書くのには白ぶちか、黒ぶちのネオンペンを使用することが多く、自分たちのグループ名はデカデカと複数のペンを利用して書いたものだ。 また、第3話で「ハギャレン」メンバーがプリクラコーナーの前のフリースペースに座っていたのも当時をリアルに描写していた。 当時は「何かイベントごとがあれば、プリクラを撮りにいく」だけではなく「今日、プリクラ撮って遊ばない?」ということも珍しくない。むしろ、遊ぶ場所が限られていた地方都市の学生だった筆者は、土日といえば「プリクラを撮りにいく」という遊びをしていたもの。だから、1日にいろんな機会で5枚も6枚も撮るのだけれど、シンプルに何回も光を浴びていると疲れるし、話したくなる時間帯もある。それに当然、私たちと同じような遊び方をしている人は多いものだから、待ち時間が生じることもあり。そんな人たちのためにフリースペースが開かれていたからだ。 ちなみに、第1週の時点では描かれていないが、当時のプリクラは交換して、そのプリクラを自前の“プリ帳”に貼るまでがセット。その交換という行為を通して、私たちは交友関係を広め、深めていったものだ。 今後、書道部と「ハギャレン」という似て非なるコミュニティでの二重生活を送ることになる結。もしかしたら、そこではプリクラというツールがきっかけとなって、2つのコミュニティを繋ぐことになるかもしれない。想像するだけでワクワクする。
於ありさ