独自のデザインがカッコいい! 特急「まほろば」はなぜ3月から定期運行化される? 大阪と奈良を結ぶ観光特急の“未来”とは
9時58分に大阪駅を出発。この日は12月初旬の土曜日でしたが、車内は空席が目立ちます。まほろば号は急な勾配をのぼり地上に出ると、淀川を渡り10時4分に新大阪駅に到着しました。 新大阪駅では大きな荷物を持った外国人旅行客が数組載ってきましたが、それでも車内は空いています。 新大阪駅を発車後は、一度北へ向かってから南吹田駅で右へ急カーブ、一転して南へと向かうのがおおさか東線の特徴です。そしてもう一度淀川を渡り、難読駅としても有名な放出駅を通過し久宝寺駅でいったん停車します。おおさか東線を走行するときは、特急とは思えないゆっくりとした速度で走行するのも特徴です。 大和路線に入ると今度はスピードアップ。ここで車掌が回ってきて「記念乗車証」が手渡されました。 大和川沿いの亀の瀬を抜け奈良県に入ると10時48分に法隆寺駅に到着、ここで数組の観光客が降りたため、空いていた車内はよりガラガラになりました。そこから10分足らず、10時57分に奈良駅に到着、59分の短い特急旅は終わりました。
2025年春に独自デザインの車両で定期運行化が決定
特急まほろば号は、大阪駅から奈良駅まで59分で結びます。12月上旬という時季的なせいもあるのか、空席の目立つ車内ですが、その分のんびりと旅気分が味わえます。 ただ、大阪駅から奈良駅まで、大阪環状線経由のJR大和路快速ならば乗車時間はおよそ50分、近鉄ならば、大阪難波から近鉄奈良駅まで快速急行でおよそ36分で到着します。 それなのにJR西日本は、なぜ臨時特急まほろばを2025年3月から定期運行化、さらには独自デザインのリニューアル車両を投入するのでしょうか。
東大寺や春日神社、興福寺、奈良国立博物館などがある奈良駅周辺は、知っているとおり関西圏の一大観光都市です。コロナが明けた2022年以降は、訪れる外国人観光客も激増しています。 大阪、とくに梅田などキタエリアに宿泊した観光客には、座って奈良へ向かいたいという需要もありそうです。現在、大和路線やおおさか東線の快速列車には、乗車券にプラス300円で必ず座れる有料座席サービス「うれしート」を用意していますが、平日の通勤・通学時間に限られ、さらに席数も少ないため、休日に観光したい人には対応できていません。 JR奈良駅と近鉄奈良駅は1kmほど離れていて、近鉄奈良駅のほうが東大寺などの有名なスポットにより近いため、観光のベースとしてはどうしても近鉄のほうが有利に働きます。同じく観光都市の京都から奈良まで、JRは奈良線、近鉄は京都線がありますが、この路線に近鉄が人気の観光特急「あをによし」を投入したのも、増え続ける観光客に対応したものだといえます。 話を戻すと、まほろば号の定期運行化の理由としては東海道・山陽新幹線で新大阪駅に来た観光客が、そのまま奈良駅まで乗り換えなしで、ゆっくり座って行きたいというニーズに応えたものなのかもしれません。 ※ ※ ※ 特急まほろばは、2025年3月15日からの定期運行にともない、同年4月からは内外装に奈良の魅力を表現したリニューアル車両がデビュー。さらに同年秋ごろには第2編成の車両が投入されるといいます。 北陸方面の特急列車で使用していた683系を改造、3両編成の車両となり、4月に投入される第1編成は「安寧(あんねい)」、2025年秋に投入される第2編成は「悠久(ゆうきゅう)」と呼ばれます。 両編成ともにオリジナルのデザインが特徴で、安寧編成は蘇芳(すおう)色や金色などを用いた暖色系のイメージで「楽園の陽光感」を表現。もうひとつの悠久編成は深みを帯びた仏像の経年変化を思わせる墨色と灰渋(はいしぶ)色を採用し、「文化の万世(万葉)への継承」を表現するといいます。 車内も安寧編成は蘇芳色のシートに奈良時代・平安時代に装飾として多く用いられた宝相華(ほうそうげ)文様、悠久編成のシートは墨色に宝相華文様と、オリジナリティあふれる車両になっているのが特徴です。 さらに車内Wi-Fiや全席コンセント、荷物スペースを設置、車椅子スペースも拡大するといいます。リニューアルされる特急まほろばは、近鉄の観光特急あをによしのように、インバウンドを中心に人気の特急になるかもしれません。
VAGUE編集部