「龍が空を泳いでいるみたい」日系ブラジル人2人、本場の龍踊りに感涙…練習参加で技術に驚きの連続
日系ブラジル人2人が、長崎市で伝統芸能「龍踊(じゃおど)り」について学んだ。長崎女子高の龍踊部の練習に参加して技術を教わったほか、長崎くんちの歴史などにも触れた。ブラジルに戻り、長崎の文化を広める役割を担いたいと意気込む。 【写真】龍踊りを一緒にやって技術を学ぶ石川さんと牧山さん 来日したのは、在ブラジル長崎県人会(和田佐代子会長)の日系3世石川ハケウさん(35)と日系2世牧山エドソン直人さん(40)。日系人を対象とした国際協力機構(JICA)の受け入れ事業の一環で、10月中旬から約20日間、同市に滞在した。 在ブラジル県人会は1962年、移住した長崎出身者が中心となって設立。現在は長崎にルーツのない日系人や非日系人も含めた285人が所属している。 県人会から「ブラジルで長崎の文化を紹介したい」と要請を受けた長崎市が2016年、練習用に使っていた龍体を寄贈した。これを機に県人会の青年部有志が「龍踊部」を結成。日系人が多く住むブラジル・サンパウロ州のイベントなどで年10回ほど披露してきた。 ただ、現地には詳しい技術や伝統を知る人がいない。部長を務める石川さんは「くんちの動画を見ても、細かい手足の動きが分からなかった」と明かす。観客から龍の意味や由来を問われても答えられなかったという。 10月中旬、2人は初めて本場の龍踊りを見た。長崎女子高の生徒たちが演じる姿に、石川さんは「龍が空を泳いでいるみたい。自分たちも観客を巻き込んで一体感のある演技をしたい」と感動し、涙をこぼした。同校で9日間、龍踊部員らと共に汗を流した。「持ち手はパドルをこぐように回して大きく動かす」「腕は高くまで上げる」。ブラジルでは龍を上下に動かして少し横に倒すだけで、腕も顔の辺りまでしか上げない。直接教わる技術は、驚きの連続だった。 2人は滞在中、長崎くんちの歴史や龍体の修復方法、長崎の歴史なども学んだ。帰国後は教わった技術や知識を惜しみなく県人会の仲間や、日本に興味のあるブラジル人にも伝えるという。牧山さんは「長崎には長い歴史と多様な文化があることを知ってもらいたい」。石川さんは「龍踊りと県人会の活動を通じて、日本とブラジルの架け橋の中心になりたい」と誓った。 (鈴鹿希英)