「バルコニーはつくらないほうがいい」家づくりのプロが断言する理由とは? 家の寿命を縮める危険も…
布団も洗濯物も外に干す必要はない
「でも、室内に干すと生乾きのにおいが気になる……」という人もいらっしゃると思います。大丈夫です。前述した「24時間換気システム」が作動している限り、家の中の湿度は常に快適な状態に保たれます。夜に洗濯して干しておけば朝にはだいたい乾いています。 わざわざランドリールームをつくる必要もありません。正確に言えば、下の写真のような、「ランドリーコーナー」を兼ねた、洗濯物を干せるスペースを設計します。昔の家にあった、サンルームのような独立した専用の場所をつくる必要はありません。現在の住宅の性能なら、直射日光にあてなくても洗濯物は十分に乾くからです。 布団についても同様です。室内の湿度はコントロールされていますので、朝起きて布団をペロンとめくっておけば、すぐに湿気は抜けます。どうしても干したければ、外ではなく室内の階段の手すりにでも掛けておけばよいでしょう。それに、蛇足ではありますが、羽毛布団は本来、調湿性を備えた素材であり、太陽の光にあてると布地が傷みやすいため、陰干しが推奨されています。つまり、外に干す必要がないのです。 布団や洗濯物を外に干さなければお天気を気にする必要もなくなり、家事負担やストレスも非常に少なくなります。しかも、外から家を見たときに洗濯物や布団がぎっしり並んでいる様子は、お世辞にも見栄えがよいとはいえません。 稀に、「子どもがおねしょしたときなど、外に干さざるをえないときもあるから」と、外に布団を干すための場所を強く望まれる人もいらっしゃいます。その場合は、一部の窓にステンレスのポールを取り付け、必要な際はそこに掛ける形で布団を干せるような仕様をおすすめしています。おねしょ布団のためだけにバルコニーやベランダをつくるのは、あまりにもったいないからです。
つくるなら「意味のある場所」に
バルコニーやベランダをつくることをおすすめするのは、布団や洗濯物を干す以外の「絶対につくるべき理由」があるときだけです。場所もお金もかけてつくるからには、意味のある空間にすべきです。たとえば、そこにジャグジー(ジェットバス。ジャグジーは商品名ですが、本書では便宜的にジャグジーと呼ばせてもらいます)をつけたり外用のソファセットを置いたりして「遊ぶ場所」「くつろぐ場所」にしたいという要望があるときなど。このような目的であれば、面積とお金をかけてつくる価値があります。 すべてのスペースに言えることですが、どうせつくるのなら、「なんとなく」ではなく、「意味のある場所」にしましょう。
【Profile】内山 里江(うちやま りえ)
一級建築士 株式会社コモドデザイン代表 1972年、高知県に生まれ、12歳まで愛媛県で過ごす。子供の頃、建築家・宮脇檀氏の設計で建てた父の友人の家に感動し、いつか自分も建築家になることを夢見る。山口県の工務店に勤務して実地で経験を積み、一級建築士になる。建築設計歴27年、のべ2000棟以上を設計・デザイン。「家を単なる休む場所ではなく、遊べる場所に」をモットーに、付加価値を高める設計を提案し続けている。
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