「一緒に小人探そう」見知らぬ小学生に誘われ2時間かけまわった「ピストジャム」の胸によみがえった幼少期の記憶とは(レビュー)
それから僕は、彼と2時間にわたって会場中をかけまわって小人を探し続けた。彼は小人には種類がたくさんあって、土しか食べないものや、雑食のものもいるとか、隠れ場所は葉っぱの下とか、ものかげだとか、タカラコガネという小人を見つけたら金持ちになるとか、アラシクロバネは凶暴だから見つけても逃げたほうがいいとか、あらゆる知識を授けてくれた。 結局、残念ながら小人は見つけられなかったが、その2時間は本当にあっというまで夢のような時間やった。幼少期にゲゲゲの鬼太郎に出てくる妖怪に魅了され、いまでも水木しげるの妖怪図鑑を愛読する自分にとっては、目が覚める思いがした。思わぬ場所で、大人になったことで失ってしまったものに気づかされた。 大人になったらたいしたことないことも、子供のときはショックを受けたり、わくわくしたりした。 忘れてしまったことすら忘れてた遠い甘酸っぱい記憶。もう触れられへんと思ってた胸の奥の小さなきらめきに、この物語のおかげで触れることができた。 [レビュアー]ピストジャム(芸人) 1978年9月10日生まれ。京都府木津川市出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大学卒業後、こがけんを誘って吉本興業の養成所へ入所(東京NSC7期生)。2002年4月にデビューし、「マスターピース」「ワンドロップ」など、いくつかのコンビを経て、ピン芸人となる。アイドルのラジオ番組 MC などでも活躍。下北沢カレーアンバサダー。かまぼこ板アート芸人。2022年『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』(新潮社)を発売。 協力:吉本興業 第一芸人文芸部 Book Bang編集部 新潮社
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