打倒・那須川天心を胸に女子ボクシングフライ級のメダル候補、並木月海が東京五輪予選代表出場権を獲得
1、2ラウンドでのポイントの優位はセコンドに教えてもらいわかっていたという。 「自分でも1、2ラウンドは取ったと思っていました。でもしっかり勝ちたかった。大事に楽にボクシングをすればいいと思うと、ダウンを取られてしまうこともあります。逃げ腰にならず最後までしっかりと戦って勝ちたかったんです」 女子の試合は3分×3ラウンド制。その最後の第3ラウンドに勝負を仕掛けてきた河野を足でかわすことをせずに受け止めた。さらに肉弾戦が増えたが、離れ際に確実に右のリードブローを当てていく。長身を生かして河野がワンツーを放ってくるが、並木も、必ずワンツーで反撃。このラウンドも5人中、4人が並木を支持。トータル、5-0でレフェリーに右手を上げられた並木は表情を変えなかった。 「勝ちたい気持ちが強すぎてぐしゃっとした接近戦が増えてしまいましたね。勝てたことは嬉しいですが、五輪には自力で出場したい。枠をとれるようにがんばっていきたい。しっかりと自分のボクシングを表現できるように」 リングを降りると笑顔が弾け、可愛い女の子に戻っていた。「防衛省」と書かれたワッペンを貼ったジャージを着ていなければ、誰も東京五輪でメダルを狙えるボクサーとは思わないだろう。 姉と兄2人の影響で、那須川天心と共に空手、キックボクシングを始めたが、遠山中学の1年の頃、「普通の女の子に戻りたい」と、1年間だけ格闘技から距離を置いた。陸上部に所属、生まれて初めて格闘技のない生活を送った。だが、憧れた「普通の女の子」は幻想に過ぎなかったことを知った。「その生活では満足できず物足りなかった」。近くのボクシングジムへ足を向けた。それがボクシングとの出会いになった。 高校は元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者、内山高志の出身高である名門、花咲徳栄に進む。千葉・成田の自宅から始発電車に乗り、片道2時間半もかけて埼玉まで通いボクシングにのめりこんだ。高校時代は選抜連覇など5度の優勝を含む27戦全勝。幼い頃から天心としのぎを削ってきた格闘DNAが開花した。