ラグビーコラム 若手が目立つ日本戦のオールブラックス 日本にとってチャンスなのはNZの〝前がかり〟なマインド
【ノーサイドの精神】26日に横浜市の日産スタジアムで行われる「リポビタンDチャレンジカップ2024」で、日本代表は2年ぶりにニュージーランド(NZ)代表「オールブラックス」と対戦する。22日にNZ代表は23人の出場予定メンバーを公式発表した。これまで例がないわけではないが、試合4日前の発表は異例なことだ。 広報担当者に理由を尋ねると、NZ代表は日本戦と、その後のイングランド、アイルランド、フランス、イタリアと対戦する欧州遠征でメンバーを分けて練習しているという。22日には報道陣に練習を公開(といっても10分程度だったが)したこともあり、どうせ顔が割れるなら発表してしまえということでもあったようだ。 日本戦メンバーで50キャップを超えるのは、FLケイン(燦然=さんぜん=と輝く100キャップ)、SOマッケンジー(56キャップ)、CTBレイナートブラウン(79キャップ)、控えPRのトゥウンガファシ(63キャップ)、リザーブSHペレナラ(87キャップ)の5人。リザーブ入りしたFLラカイとBKラヴの2人はノンキャップ。1桁キャップの選手が9人という編成は、やはり若い。 今年就任したスコット・ロバートソン監督のもとでは、必ずしも順風満帆ではない。8-9月の南半球4カ国対抗では、初めて3敗を喫し2位に終わった。日本の次のイングランド戦は中6日の11月3日。長距離移動もあるため、日本戦前日の25日には約15人が欧州へ飛び立って準備に入る。日本戦メンバー外になったバレット3兄弟やNO・8サヴェア、CTBイオアネら主力も、先乗り組に入っていると思われる。 22日に会見したスコット・ロバートソン監督は「日本も若いメンバーが多く、その若手が大活躍していることも知っている」と話し、「特にFBの李承信。彼のプレーを見るのは、みんな楽しみだと思う」と名前を挙げた。 はて? 李承信は負傷でこの秋の招集は見送りになっているはず。オールブラックスのFW第3列として23キャップ、トップリーグのリコーでもプレーしたロバートソン氏としては、情報不足と受け取られる不用意な発言だったかもしれない。それとも何らかの意図があったのか。あるいは夏を総括しての言葉だったのかもしれないが。 いずれにせよ、今回のNZはどうも、日本戦への軸足が定まっていないように感じる。目の肥えたNZのファンたちは、南半球4カ国対抗での3敗にも「まだロバートソン体制が始まったばかりだから」と寛容な姿勢を見せていたようだが、欧州遠征が不調なら厳しい声があちこちから上がってくるだろう。欧州へ向けてマインドが〝前がかり〟になる状況になりやすく、エディー・チルドレンが超速ラグビーで、王国の足をすくうチャンスでもある。過去7戦全敗の超強豪から、日本はそのチャンスをものにできるか、それとも…。(田中浩)