見た目だけでもタダモノじゃない感が伝わってくるぜ! 「ルノー エンブレム」は水素燃料電池を使ったまったく新しいEVだった
ルノーの新時代を予感させるコンセプトカー
2024年のパリ・サロンで大きな話題を呼んだコンセプトカーのひとつが、地元フランスのルノーが開発した、コンパクトなシューティングブレーク風のスタイリングをもつ4ドアハッチバック車の「エンブレム」だ。全長は4.8m、全高は1.52m、そしてホイールベースは2900mmと比較的扱いやすく、同時にその機能性は外観の写真からも容易に想像できるところ。 【写真】デザインも車内も超先進的! 市販化期待大なルノー・エンブレムの全容(全13枚) もちろんエアロダイナミクスを最適化するためにフロントバンパーやボンネットフィン、さらには後方のアクティブ・ディフューザーなどには独特なデザインが与えられている。 前後のホイールも同様の理由からフルディスクタイプを採用。これによって走行中の静粛性も大いに期待できることは確かなところだ。 さらに驚くべきは、軽量化への徹底した対応だ。ボディの表面には特別な突起物は与えられておらず、たとえばサイドミラーはホイールアーチに内蔵された小型カメラに置き換えられている。 注目の車重は生産型では1750kgが目標値になるとされるが、それはこのエンブレムが採用するパワーユニットの構成を知れば、大いに驚くべき数字と誰もが納得することだろう。 そもそもルノーが、このコンセプトカー、エンブレムを開発した目的は、CO2排出量を90%削減したモデルを市場へと投入すること、そして車両のライフサイクル全体で脱炭素化を目指し、その数字をやはりCO2排出量で5トン以下に抑えることにあった。
水素燃料電池をレンジエクステンダーとして使用する新コンセプト
そのために考えられたパワーユニットが40kWhのニッケルマンガンコバルトバッテリーと水素燃料電池の組み合わせで、この両バッテリーから供給される電力をもとに、レアアースを使用しないリヤアクスルに搭載したエレクトリックモーター1基を駆動。最高出力で217馬力を発生する仕組みだ。 ニッケルマンガンコバルトバッテリーの残量が低下すると、水素燃料電池からの発電でそれを充電。ちなみに水素補充のためのストップを2回(トータル10分)行うと、走行可能距離は1000kmに達することができるという。 そして、前で触れた1750kgという車重の目標値は、すでに市場にあるセニックEテックより100kgほど軽い数字になる。エアロダイナミクスも同様の比較で、Cd値は0.29に対して0.25にまで向上を果たしている。 現在の段階ではあくまでもコンセプトカーとしての扱いだが、「Ampr」と呼ばれるそのプラットフォームは、すでにセニックEテックなどで実績のあるもの。それを考えると、実際にこのエンブレムが市場へ投入されてくるのも意外に早い段階と見るのが妥当だろう。 フランス車のファンばかりではなく、あらゆるブランドのファンにも大きな刺激を与えてくれそうなエンブレム。レンジエクステンダーに水素(水素燃料電池)を用いるという発想は、インフラの整備しだいでは、これからのエコカーのなかでもひとつの大きなトレンドとなっていくかもしれない。 はたしてこの日本で、ルノー・エンブレムの走りを楽しむことができる日は訪れるだろうか。
山崎元裕