阪神の超変革を支える金本―掛布のホットライン!
金本監督と掛布2軍監督は、ことあるごとに直接意見交換を行い、見事なまでのホットラインが確立されている。また2軍に落ちた選手は、掛布2軍監督の独自のチェック機能と、的を得た“レッスン”で、次々と再生されるため、金本監督も「掛布さんを始め、2軍のスタッフがきっちりと指導して送り出してくれている」と、絶大な信頼を寄せ、なおのこと2人のホットラインは、強固なものになっている。 そもそも2人は、現役時代をともにプレーしたわけではなく接点はない。酒を酌み交わす仲でもないのだが、掛布2軍監督がDCとしてファームの打撃の育成を見ていた昨年、一昨年のキャンプなどで評論家として訪ねた金本監督とバッティングの議論を交わす中で両者は、野球の理論で意気投合した。馴れ合いのお友達関係でなく、野球でつながった2人だけに、なおさらシビアな意見交換と信頼関係が生まれている。 昨年までの阪神は、和田前監督と古屋2軍監督、平田2軍監督の間に、ここまで密なホットラインも信頼関係もなかった。2軍のスタッフからすれば、「今上げて欲しい、今使って欲しい」という人材が、寝かされ、やっと昇格の声がかかる頃には、もう調子を落としていたというチグハグな1、2軍の交流も少なくなかった。上でこそ経験を積まねばならない若手の抜擢も、目先の勝負にこだわる余り行われなかった。 もっと遡れば、“ノムさん”こと野村克也氏が、監督の時代にも、当時の岡田彰布2軍監督を信頼せず、岡田氏が、しっかりと育てて推薦した選手を使わずに、せっかくの戦力を空回りさせて最下位に沈んだこともある。磐石な戦力のないチームほど、1、2軍の70人をフル活動させてペナントを乗り切るのが鉄則だが、これまでの阪神は、その連携がうまくいかず、若手育成につながらないという悪循環を生んでいた。 だが今季は、金本―掛布のホットラインで、1、2軍の風通しが良くなり、しかも、金本監督が昇格させた選手を迷うことなく即断で起用するため、2軍で掛布2軍監督が手をかけたスタイルと勢いを保ったまま1軍のバッターボックスに立てているのだ。 掛布2軍監督も言う。 「金本監督が、2軍の現場の意見を吸い上げてくれるので、こちらも、どう育て、どういう立場で上へ送り出すのかのビジョンを持てる。しかも、昇格した選手はすぐに使ってもらえるので2軍の選手のモチベーション、意識も高くなっている」 組織を円滑にする法則として、“ホウ(報告)レン(連絡)ソウ(相談)”という古臭いフレーズがあるが、コミュニケーションと信頼関係が、勝利の集団作りにつながることは間違いない。 若手は、いずれ壁にぶつかり、中堅、主力に頼らざるをえないタイミングがくるだろうが、再生工場としての掛布ファームの存在と、金本ー掛布のホットラインがある限り、阪神の「超変革」が止まることはないだろう。勝ち負けにこだわらねばならないのは、当然で、序盤は、継投ミスこそ目立ったが、これこそ虎ファンが待ち望んでいたワクワクできる野球である。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)