“史上2番目”マグロ2億700万円!大間産クロマグロ276キロ 豊洲市場初競り狂騒曲
東京都江東区の豊洲市場で5日、今年最初の取引となる「初競り」が開かれ、276キロの青森県大間産クロマグロがこの日の最高値の2億700万円で競り落とされた。昨年の1億1424万円(238キロ)の約2倍。記録が残る1999年以降で、2019年の3億3360万円(278キロ)に次ぐ2番目の高値となった。 午前5時10分、競り人の威勢の良い声が響く中、黒光りしたクロマグロが次々と競り落とされていった。最高値となったクロマグロは、仲卸の「やま幸」と「鮨 銀座おのでら」などを運営する「ONODERA GROUP(オノデラグループ)」が共同で、ライバル社と競り合った。2億円を超えたところで、軍配は“やま幸・おのでら連合”に上がった。両社にとって5年連続で最高値ゲットとなった。 年末に水揚げされたマグロが多い中、キロ単価75万円の“一番マグロ”は前日4日に釣り上げられたばかり。巨体を前に会見したやま幸の山口幸隆社長は「鮮度感がずばぬけていた。これが一番高くなるだろうなとすぐに分かった」と笑顔。オノデラグループの長尾真司社長は「縁起物ですので食べていただいて、皆さんが良い一年を過ごせるようになれば」と話した。 一番マグロは東京・表参道の「廻転鮨 銀座おのでら本店」で午前11時から解体ショー。店舗に運び込む際には、ゲストで来店した大相撲の横綱・照ノ富士が加勢した。照ノ富士は「お相撲さん3、4人いれば持ち上がる。来年からはお相撲さんが運んだらどう?」と笑っていた。解体されたマグロは同店で早速、赤身と中トロの2貫で1160円(税込み)で提供。照ノ富士は“一番客”となり、2貫を瞬く間に平らげ「おいしい。縁起物なので、今年一年皆さんに喜んでもらえる成績を残したい」と満足そうだった。原価は1貫3万円ほどだという。市場関係者は「コロナ禍が収束しインバウンドや外食産業が好調。一番マグロが縁起物であることは訪日客にも知られており、宣伝効果を考えると元は取れるという計算だろう」と話した。 一番マグロは約6000貫分。銀座おのでらでは、米国ロサンゼルス、ハワイ店を含む国内外の系列店13店に分けるとした。客が殺到する本店では整理券が配布され、正午過ぎには155番目、624分(10時間24分)待ちとなり、午後1時30分の開店を前に早々に“札止め”となった。午前6時から並び、3年連続で一番最初に入店したという三重県の増井孝充さん(57)は「口に入った瞬間とろけるとはこういうこと。最高の年にできるのかなと思いました」と堪能していた。(菊地 一) ≪漁師の取り分は半分≫ 初競り最高値のクロマグロを釣り上げた漁師の竹内正弘さん(73)は5日、青森県大間町の自宅で取材に応じ「夢みたいだ」と笑顔で喜んだ。漁師歴25年で、初競り最高値の栄誉に輝くのは23年以来、2年ぶり8回目。17年の7420万円を2.5倍以上も上回る自己最高値となった。 最高値のクロマグロは4日午前8時ごろ、津軽海峡で、はえ縄で釣り上げた。276キロの魚体を目にした時「牛のように太っていてこれはいい勝負になるな」と最高値を期待はしたが、2億円を超える落札額は望外。税金などを引いて約半分が実際の取り分となる。竹内さんは「びっくりしたねえ。おいしく食べてもらえたらうれしい」と笑顔を見せた。 ≪高騰複雑な思いも 昨年転覆で漁師死亡≫昨年の12月には、19年の“3億円マグロ”を釣り上げたマグロ漁船「第28光明丸」の船長・藤枝亮一さん(70)らが、漁の最中に船の転覆で行方不明になり、遺体で発見される事故が起きた。やま幸の山口社長は「競りの価格が高騰すると、漁師さんの判断が鈍るからやめようと話していたが、2億円という数字になってしまった。それでも漁師の夢を追うことは、若い人たちの励みになる。夢を見られることで、若い人が増えてくるという点ではいいのではないか」と話した。