センバツ高校野球 やったぞ、久我山4強 好機逃さず逆転勝ち /東京
第94回選抜高校野球大会第9日の28日、準々決勝に臨んだ国学院久我山(杉並区)は星稜(石川)に逆転勝ちし、ベスト4進出を決めた。都勢がセンバツで4強入りするのは2012年の関東一以来10年ぶりの快挙だ。2点を追う五回、1番斎藤の適時打や4番下川辺の今大会初本塁打などで一挙4点。投げては先発成田、渡辺、松本慎の粘りの継投で相手の猛追をかわした。久我山は準決勝(大会第10日第2試合)で、大阪桐蔭(大阪)と戦う。【小林遥、中田博維】 同点に追いつき、チャンスは続く。五回2死二塁で4番下川辺が打席に立った。「今大会で結果を出せていなかったが、みんなでつないでくれて回ってきた。思い切って行こう」と集中した。真ん中に来た速球を一振りすると、打球はレフトスタンドへ。右手を大きく突き上げた。「気持ちよかった」。父博幸さん(52)は「2回戦まで本来の打撃ではなかったので、本当にうれしい」と笑顔を見せた。 苦しい戦いだった。先発成田は一回、先頭打者に安打を許し、2番打者にも四球を与え、いきなりピンチを迎えたが、中軸を抑えて無失点。だが四回、強打の星稜に4連打を許して2点を追う展開になった。 反撃に転じたのは五回。四球を足がかりに好機を迎えた。1番斎藤が右前にチーム初安打となる適時打を放った。斎藤の父一成さん(58)は「安心した。このまま調子に乗ってくれれば」と祈るように話した。言葉通り、敵失の間に、斎藤が生還して追加点を挙げると、下川辺の本塁打が飛び出した。 六回から左腕の渡辺がマウンドに上がり、小気味の良い投球で星稜をゼロに抑えていく。 だが簡単には終わらなかった。最終回、四球で走者を出すと、同じ左腕の松本慎に代わったが、2死一、三塁のピンチになった。スタンドの父母たちは息をのんで見守る。それでも内野フライに打ち取ってゲームセット。松本の母いづみさん(51)は「もう見ていられなかった。良い仲間に恵まれて良かった。『頑張ったね』と言ってあげたい」と涙を流した。粘りの投球を見せた先発・成田の母律子さん(49)は「全員野球でうまくパズルがはまった感じです」と健闘をたたえた。 ◇「翔」で駆け上がれ ○…一塁側アルプス席の国学院久我山の父母らは「翔」の文字が背中に書かれた真っ赤なTシャツ姿でエールを送った=写真。毎年、チームで漢字一文字のテーマを決めており、今年は「目標に向かって羽ばたく」との思いを込めたという。当初の目標のベスト8を超えるベスト4進出。木津寿哉選手(2年)の父博昭さん(49)は「(文字通り)羽ばたいて優勝まで駆け上がってほしい」と笑顔で話した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇次戦も全力で挑む 国学院久我山・成田陸投手(3年) 一回の立ち上がり、安打と四球で無死一、二塁のピンチにも動じなかった。「物おじせず、どんどん投げ込んでくれ」という捕手吉川の言葉に背中を押され、思い切り腕を振った。相手の主軸を三振や凡打に抑え無失点。流れを渡さなかった。 中学から高1までは捕手で肩に自信があり、速球が持ち味だ。昨秋の都大会で初めて公式戦に登板し、予選から本大会1回戦まで3試合を完投。全て3失点以内に抑えた。投手としてレベルアップするために、冬は下半身から上半身へ力をうまく伝えるためのトレーニングに励んだ。 エースナンバーを背負った今大会は1回戦は2失点で完投したが、2回戦は一塁手で出場。この日も六回から仲間にマウンドを託した。それでも「全員で勝つのが久我山のスタイル。誰が投げようが同じ」と納得している。 強豪・大阪桐蔭との準決勝に向けて「自分の出番を見据えて力を出し尽くしたい」と語る。尾崎監督に「頼もしい」と言わしめる投手陣の一角として、ぶつかっていく。【小林遥、加藤昌平】 〔多摩版〕