高齢化が進み、高くなる「介護保険料」。所得額や居住地でかなりの差がある?
介護保険制度の仕組み
そもそも介護保険制度は、体の機能が衰えてきたことで、その方が受けたいと各種の介護サービスを、比較的安く受けられることを目的に制定された保険制度です。 具体的には、デイサービスの利用、介護ヘルパーの派遣、入浴サービスの実施など、制度があることで安い自己負担額で利用できることです。市区町村が提供する各種の介護サービスを、多くの方が1割負担で、所得の多少高い方でも2~3割負担で受けられる仕組みです。この負担率は医療保険制度の仕組みとほぼ同様です。 例えば、最も介護が必要な重度の「要介護5」と認定されている方で、月額最大約36万円のサービスを利用できますが、支払額は1割負担の方で約3万6000円だけです。介護サービス全体の費用は50%が公費で賄われ、残りが利用者の負担と介護保険料で賄われています。 介護保険を支えている仕組みのなかでは、公費分を除くと40歳以上の介護保険加入者が支払う介護保険料と、利用者が介護サービスを利用した際に支払う利用料で賄っています。ただ地域によって、加入者が支払う介護保険料に大きな差があります。 その要因としては、住民の高齢化の割合、介護認定者の割合、介護サービスの利用頻度、重度の介護認定者(要介護4、5)の割合などが、高いほど介護費用の増加につながっています。実際に介護保険料が高い自治体は、介護サービスの利用頻度などが高い傾向にあります。
介護保険料の支払い方法と対象者
介護保険料は、40歳以上の国民全員が負担します。40~64歳までの方(第2号被保険者と呼ぶ)と、65歳以上の方(第1号被保険者と呼ぶ)とでは、仕組みが異なります。また40~64歳の方では、加入している健康保険によって支払い方法が変わります。 40~64歳で、会社員・公務員など職場の組合健康保険に加入されている方は、その方の月額賃金に一定の保険料率を掛けた保険料額の半分が、支払う保険料になります。残りの半額分は勤務先の企業などが負担します。本人の居住地の違いによる支払額の変動はありません。介護保険料は加入している健康保険組合から支払われますが、健康保険料と同様、本人の給与から天引きされます。 40~64歳で、自営業やフリーランスを含む個人事業主など、国民健康保険に加入されている方は、本人に通知される市区町村が定めた金額を納付します。その際、本人の居住地、本人の所得額、世帯人数などにより、納付額に差が生まれます。多くの場合、国民健康保険料などと一緒に金融機関を通じて支払います。 実際に介護保険を利用する65歳以上の方は、本人の所得額などに応じて市区町村が決めた金額を支払います。所得額によって支払額が異なりますが、居住地によっても金額が変わってきます。 同じ所得の方でも、住んでいる地域によって支払額に差がありますが、その金額を市区町村に支払います。直接納付することもできますが、支給される年金から天引きにすることも可能です。また実際に介護サービスを受ける立場になっても、決められた保険料は払い続けます。 介護従事者への待遇改善など、制度の存続に保険料の増加はやむ負えない面もありますが、一方で月額1万円近い保険料となると、負担に耐えられない高齢者を生むことにもなり、今後は制度のあり方も問われることになりそうです。 出典 厚生労働省 介護保険制度の概要 厚生労働省 第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について 厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料 執筆者:黒木達也 経済ジャーナリスト 監修:中嶋正廣 行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
ファイナンシャルフィールド編集部