ふるさと納税 ”アマゾン参入”でどう変わるのか?【WBS】
1兆円規模に迫るふるさと納税市場にネット通販の巨人「アマゾンジャパン」が2025年の春にも仲介事業へ参入しようと動き出していることが明らかになりました。取材すると、すでに多くの自治体がアマゾンから提案を受けていることがわかりました。アマゾンの参入でふるさと納税はどう変わるのでしょうか? 街の人にふるさと納税について聞きました。 「普段は手が出ないような金額のものをお得に買えるのがいい。フルーツとか肉とか」 「トイレットペーパーがすごく良かった。今までない。市販のより良かった」 寄付した自治体から、その土地にちなんだ返礼品がもらえるふるさと納税。その巨大市場に参入しようと動き出しているのが、ネット通販の巨人「アマゾン」です。ただ、アマゾンはその計画を公にしていません。テレビ東京は寄付額の多い自治体を中心に、事実関係を確認。すると22の自治体のうち8割がアマゾンから既に導入提案の連絡があったと明かしました。 アマゾンから具体的な説明を受けたというある自治体関係者は「『アマゾンふるさと』というサービスで、手数料率にかかる早割プランや、送料の負担を解決する提案をされた」「破格の数字です。最初聞いたときは大丈夫なのかなと思った」と話します。 自治体の担当者たちが口を揃えて強調したのが、手数料の安さです。現在自治体がふるさと納税サイトを運営する仲介業者を利用して寄付金を10億円集めたとすると、その10%となるおよそ1億円を業者に支払うのが一般的です。 これに対して、アマゾンは自治体が初期手数料として250万円を支払えば、仲介手数料を2年間3.8%にすると提案したといい、これまでの半額以下となるのです。コストを抑えられれば、その分だけ、自治体には有効活用できる税金を確保できるメリットがあります。 他にもアマゾンの強みはあります。アマゾンの全国各地の物流を生かすことで、配送時間の短縮や自治体の配送負担の軽減に繋がる可能性もあります。 「天下のアマゾンが大きなシェアを取る可能性がある。入らないと寄付額が入ってこなくなる。受けようとは思っている」(自治体関係者) 低いコストを武器に、ふるさと納税参入へ動き始めたアマゾン。ふるさと納税制度に詳しい「東京財団政策研究所」の平田英明主席研究員は、業界に与える影響は大きいと言います。 「アマゾンは大規模にやっている自治体に対してこのサービスを提供していくと思う。そういう意味では自治体に対してアマゾンが総取りしてくる可能性がある」 先週、アマゾンの動きが伝わると、仲介サイトの運営企業の株価は軒並み下落しました。その一方、覇権を取るには課題もあると指摘します 「ふるさと納税はさまざまな手続きや確定申告がある。書類の手続きは既存の仲介サイトが便利な仕組みをつくっているので、そこをキャッチアップできるかどうかは、アマゾンが受け入れられるかのポイントになる」(平田主席研究員) アマゾンの新規産業について、既存の仲介サイト「ふるさとチョイス」の運営会社を傘下に持つチェンジホールディングスは声明で「市場全体にとってプラスに働く」とする一方「寄付に付随して返礼品がもらえることからECと混同されがちだが、本来の制度趣旨とは異なる。国の制度は、国の意向に沿って運営すべしというのが、当社グループの考え方」と語りました。 参入について、アマゾンジャパンは「お問い合わせの件につきましては、お答えできることはない」としました。 ※ワールドビジネスサテライト