横浜F・マリノス優勝に水を差した主審のお粗末ジャッジ
ゴールキーパー不在では試合が成り立たない。今夏にサンフレッチェ広島から期限付き移籍で加入した、リザーブの中林洋次が急いで準備を整え、トップ下のマルコス・ジュニオールと交代でピッチに入る。中林は壁の位置を把握し、自分の感覚にアジャストさせながら精神を集中させる。 果たして、森重の直接フリーキックがクロスバーの上を越えた時点で、最初に試合が中断されてから6分以上もの時間が過ぎていた。キックオフ時の気温7.1度がさらに下がっていたなかで、スタンドを埋めた大観衆は事情をよく把握できないまま状況を見つめ、次第に騒然としていったわけだ。 最初にインカムで交信した時点で、おそらくは木村主審と三原副審のコミュニケーションが密に取れていなかったのだろう。なので、三原副審から再度コンタクトが取られたときに、朴による得点機会阻止があったことがようやく確認されたと推測できる。 J1の1位と2位が最終節で優勝をかけて対峙するのは、6万2241人が駆けつけた埼玉スタジアムで浦和レッズがガンバ大阪を3-2で撃破した、2006シーズン以来となる。インターネットの有料動画配信サービスDAZN(ダ・ゾーン)に加えて、地上波でもNHK総合で生中継されるなど、大きな注目を集めた今回の一戦であまりにもお粗末な判定が映し出されてしまった。 J1では来シーズンから、リーグ戦の全試合でVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入される。明らかなゴールが見逃された5月17日のレッズ対湘南ベルマーレをはじめ、例年以上に誤審がクローズアップされた状況を受けて、計画を前倒ししての導入が決まった。 もっとも、VARがあるからすべてが解決するわけではない。判定の正確性は向上するものの、運用するのはあくまでも審判団となる。彼らがレフェリングにおける基本技術をより高め、選手たちも判定をリスペクトする精神をもちあわせるなかで、VARの存在感も初めて増してくる。